日本では気候要因も
このように、23〜24年の冬の流行が早期に始まることは米国や南半球の状況から予想されていたわけですが、9月という秋の時期から流行するのは想定外でした。この原因として、今年の日本の異常気象が関与している可能性もあります。世界保健機関(WHO)が9月18日に発表した世界のインフルエンザ流行状況によれば、現在はアジアの熱帯や亜熱帯地域で患者数が大きく増加しています。この地域は6月から9月ごろまで雨期になり、その時期にインフルエンザの流行が毎年発生しています。雨期は人々が屋内にとどまる時間が長く、そこで飛沫(ひまつ)感染が起こりやすくなるのです。
今年の日本の夏は例年よりも気温が高く、雨も多い異常気象となりました。これはアジアの亜熱帯に近い気候であり、それが今年の日本で9月からインフルエンザの流行を起こしている一因とも考えられます。もちろん、インフルエンザへの免疫が低下していることが大きな要因になっていますが、こうした異常気象の影響もあると考えます。
今後の本格的流行は
では、これから先、インフルエンザの流行はどのように推移するのでしょうか。インフルエンザの本来の流行は冬の季節なので、このまま本格的な冬の流行に入っていくと予想されます。患者数が新型コロナ流行前より多くなることも想定しておいた方がいいでしょう。
これに備えるためには、インフルエンザワクチンの接種を受けておくのが最も効果的な方法です。繰り返しますが、今年は国民の皆さんのインフルエンザへの免疫が低下している状況にあることから、積極的な接種をお勧めします。
ワクチン接種に加えて、23〜24年の冬は新型コロナとインフルエンザの同時流行になる可能性が高くなるため、流行拡大時はマスク着用、手洗い、部屋の換気などの基本的な感染対策を再強化することも必要です。
インフルエンザの変則的な流行が通常の冬の流行に戻るかは、今後の米国の流行状況などが参考になるでしょう。もし、日本での変則流行に異常気象が関与しているとすれば、秋の小規模な流行はこの先も起きるかもしれません。いずれにしても、まずは、23-24年冬の新型コロナとインフルエンザの同時流行を乗り越えていくことが大切です。
濱田 篤郎(はまだ あつお)◎東京医科大学病院渡航者医療センター特任教授。1981年東京慈恵会医科大学卒業後、米国Case Western Reserve大学留学。東京慈恵会医科大学で熱帯医学教室講師を経て、2004年に海外勤務健康管理センターの所長代理。10年7月より東京医科大学病院渡航者医療センター教授。21年4月より現職。渡航医学に精通し、海外渡航者の健康や感染症史に関する著書多数。新著は『パンデミックを生き抜く 中世ペストに学ぶ新型コロナ対策』(朝日新聞出版)。