音楽

2023.11.10 12:00

AIの進歩VS法整備、加速するイタチごっこ

(Getty Images)

アーティストが自らAIを制作過程に受け入れてしまうと、彼ら本来の芸術性が希釈される可能性があり、AIへの依存は才能を更に引き出すことを阻止し兼ねない。その半面、AIは制作時間を大幅に短縮したり、ファン層の嗜好を予測してその分析結果を反映し、編曲したりすることもできる。
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さらには、複数の言語で楽曲をリリースする際に、ディープフェイク技術で声も姿も本人そっくりに生成することで大幅に経費を節減しながら、より広い市場でのヒットを狙うことも可能である。

しかし、レーベルがAIを安易に利用すると、十分に監督の目が行き届かずにAIが第三者の著作権を侵害し、訴訟問題に発展することが懸念される。この為、ユニバーサル・ミュージックは既に、著作権侵害を侵す可能性があるとして全社員に対し、特定のアーティストや作品を基にAIを使った楽曲制作を禁止している。

AI作品に著作権はあるのか

AIは既存のコンテンツを学習して、新たな映像や楽曲や脚本などを生成する。そのためAIで生成した作品に対して著作権法がどこまで適応されるかは、各国においていまだ流動的で、方向性も確定していない。米国では人が創作したものだけが著作権保護の対象となっている為、AIが生成した音楽は保護対象にならない。実際に、AIを使ってエミネム風の歌詞と声を生成した動画をアップロードしたユーチューバーに対し、エミネムが所属するユニバーサル・ミュージックは著作権侵害に当たるとして削除を要求したが、その法的根拠は議論の余地が残されている。

では、人とAIがコラボレーションして制作した作品はどのように扱えば良いのだろうか?
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あるユーチューバーが、ディープフェイクを利用してラッパーのドレイクとシンガーソングライターのザ・ウィウークエンドの二人の声と外見を取り込み、勝手にデュエット作品「ハート・オン・マイ・スリーブ」を作成。差し止め請求されたが、削除されるまでにTikTokで150万回、Spotifyで60万回も再生されたことが挙げられる。同様に、営利目的で悪意をもってAIを利用しようとする偽の新曲リリースは国や地域に関わらず頻発し、もぐら叩き状況となっていることから、法整備は急務である。

グラミー賞授与団体は「AIが制作に関わった楽曲も審査の対象にするが、受賞対象はあくまで創作した人に限られる」との方針を公表、AIとの共生は容認せざるを得ないとしながらも、一線を画している。

現時点では、AIの侵入をどこまで許すのかは人が判断しているがAIは2029年には独自の思考能力を持ち始め、45年には人の能力を超越すると認識されている。法整備とAIの進歩のいたちごっこはさらに加速していくだろう。

文=北谷賢司

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