自らやり抜き、仲間を増やすリーダーシップ
齋藤社長は、他社と差別化できる強みを作るのが経営者の仕事、それができなければ価格競争に陥り、自社の発展にも業界の発展にもつながらない。だから何が何でも独自の新事業を作る、と自分の役割を明確化し、社内でも公言した。新事業ができるまで既存事業の会社には行かずに一人で別に借りたオフィスにこもり、新規事業を考え続けたそうだ。会社に行かない期間がなんと2年間だったというから胆力がすごい。
その時の判断指針は、今ある仕事がずっと続くとは限らないが、いま一緒に働いている社員と、自分たちを取り巻く地域住民はずっとそこにいる、その人たちが幸せな人生をおくるために役立つこと徹底して考える、というもの。
そうして様々な事業を生み出していった。最新のサービスはPocci!(ポッチ!)というもの。企業から排出される古紙のリサイクルや従業員の家庭から出る資源物を企業に持参しリサイクルすることなどによってポイントが貯まり、そのポイントを使って地域の障害者施設や子ども食堂、青少年スポーツチームの支援ができる循環の仕組み。
リサイクルを軸にまちと人と企業がつながる。もちろんそれをつないでくれるドライバーさんにも自然と意識がいく。
新しいことをやるときの問題点として世間一般では、変化への抵抗勢力ができたり、理解者が不足したりということがあろうかと思う。この会社では、自分と仲間と近隣地域が共通して幸せになることを目指し、強いリーダーシップからやり抜くことに関しての信頼感も厚い。さらにはコミュニケーション力が高いので自然と仲間が増える。
この会社に今回初めて訪問し、イノベーションがうまれる組織カルチャーについて、目に見えないものを理解できるものなのか事前には分からなかったが、12年前被災地を走る絆パッカー車を見た時も、ゴミ袋に貼られたありがとうの手紙も、ゴミを集積してくれるドライバーさんの挨拶も、齋藤社長の話ぶりも、この会社はほっこり温かく、そのカルチャーは温度のようにじんわりと伝わってきた。
いまベストセラーになっている書籍『グッドライフ』(ロバート・ウォールディンガー、マーク・シュルツ著)では、著者らが所属するハーバード大学での研究結果として、健康と幸福を決めるために人間関係が重要な因子であることが膨大な資料によって示されており、「人は必ずしも仕事を選べるわけではない、だが、私たちは思っている以上に仕事を通して幸せになれる」とあった。SKグループで働く人々の雰囲気も、そのことを裏付ける実例と感じた。