もう1つの狙いは企業、特に自社の技術や資源の見える化である。
メディアに取り上げられる場合、多くは商品だけでなく企業についても記載される。すると結果として当社の存在や技術をアピールすることとなり、たとえ新商品の購入には繋がらなくても、別商品の売上や新たな問い合わせに繋がる可能性が高く「一過性で終わらない」成果に繋げることができる。実際、國翔も新聞掲載を機に新商品の売上だけでなく、既存事業における新たな顧客も獲得している。
國翔の事例は、まさしく「プロダクトイノベーション」だが、おそらく石井社長はご自身が「イノベーションを起こした」とは思っていない。売上アップという目的のもとキーリソースを軸として価値提案を時代にマッチさせたことで、顧客セグメントが変化し、チャネルが変化し、その結果「気づいたらイノベーションが起きた」に過ぎないのだ。
ビジネスモデルキャンバスには9つのブロックがあるが、それぞれのブロックが連動していることが特徴である。ビジネスモデルを変える、というと果てしなく大きいことのように聞こえるが、「ある1つの要素」を変化させるだけでイノベーションを起こすことが可能なのだ。
20世紀の「作れば売れる」時代が過ぎ、供給過多と言われる21世紀は「選ばれなければ売れない」時代。その中で選ばれるためには顧客が求めているものが何であるのかということを考え、新たな価値を創造することが重要だ。そしてそれは、必ずしも資金の潤沢さに左右されないことは事例からご理解いただけたのではないだろうか。是非、多くの中小企業・小規模事業者にチャレンジしてもらいたい。