SMALL GIANTS

2023.09.25 08:30

​​地域をゆっくりかき混ぜる 八尾発まちづくり「やお糠床モデル」とは


まずひとつ目に、「つくるー場の共有」。130社で集まれる場をつくり、人と人が出会う場となり、共感したり共鳴したりする文脈をつくっていく活動をしています。具体的には、月に1回会合があったり、新人研修を合同で開いたり、みんなでものづくり体験プログラムを開催したりと、まちに集う意味をつくっています。
 
2つ目は、「伝えるー知見の共有」です。まちで働いているけれど、意外とまちを知らない人たちにまちのことを伝えたり、会員が持つ経験やノウハウをシェアする場を手がけています。具体的には、「学ぶ場やお」という会員勉強会を開催したり、新たなものづくりに挑戦したいという企業向けにクラウドファンディングの成功者や先駆者からアドバイスをもらうメンター会を実施したりと、会員同士で惜しみなく、知見を共有しています。
 
3つ目は、「持ち帰るー想い、熱量の共有」です。こちらは、前の2つと違い、外に向けて行っている活動で主に、小学生を対象として地域に所在するものづくり企業の従業員が先生となり、ものづくりの体験ワークショップやこうば見学会、アンテナショップの運営を行っています。ここでは、つくり手の想い、熱量を発信しています。

難題だらけのまちづくりの解決手法とは? 

図 課題のストック

図 課題のストック


みせるばやおは、私が八尾市職員時代に立ち上げたコミュニティです。
 
2013年に産業政策の担当になった私は、政策を机の上で描くより、中小企業の現実を知りたいと思い、アンケートを持って3カ月で100社を回りました。そのときに出てきた課題は「人材が確保できない」「新商品開発したいけどどうすればいいか」「若手が育たない」「まちの認知度が低いから行政でなんとかしてほしい」など、多岐にわたることがわかりました。
 
これは自分だけで解決ができないし、行政だけでも解決ができないだろうなと感じました。多様な方々と出会い、少しでも良い変化をつくるための起点になりたいなと思いました。

課題の規模や視点によって解決に向けて行う施策や方法は違うので、似たような問題はカテゴライズしながら、日々中小企業の皆さんからの課題を心の引き出しにストックしていきました。
 
その上で、課題解決の糸口になりそうな人脈や知見などを拡大していくことに専念し、まちぐるみで解決していく方法を発見していく。その集大成が自分の中では「みせるばやお」というコミュニティです。
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文=松尾泰貴

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