第5回は、小学校教員の経験をもとにスタートアップ「LX DESIGN」を起業した金谷智氏。同社では全国の小中学校・高校に対して、教育人材マッチングサービス「複業先生」を提供している。
「複業先生」はIT・グローバル・金融・起業・性など、教員だけではカバーしきれない分野の知見を持つ民間人材を学校へ紹介するもので、児童・生徒に現代社会と直結した学びの機会を与えている。6月には生成AIを活用したサービス提供も開始した。
「教育は国家百年の計を担う仕事」と語るのは、LX DESIGN 代表取締役の金谷智氏。教育者としてのビジョンを実現するためにスタートアップという道を選んだ理由について話を聞いた。
・インタビュアー:Chiyo Watanabe Kamino Plug and Play Japan Content Marketing Associate
1000人を超える複業先生
──教育者からスタートアップへとキャリアチェンジされた理由はなぜですか?実は、学校の先生は一生やりたかった仕事なんです。両親が2人とも教員で、誰かの人生にインパクトを残せる教職は、最高の仕事だと思っていました。一方で、教師という仕事のあり方がこの先変わっていくだろうなとも感じていました。
進化するテクノロジーによって教育の役割も仕事を通じた自己実現の達成から、学びの場を介した多様な価値観の醸成や繋がりの促進に変わってきています。資本主義社会では何かを最短で習得する人が優秀だと言われていましたが、生成AIが生まれたいま、優秀さを図る指標はすぐに変わっていくかもしれない。どうすれば自分が理想とする教育を実現できるのか試行錯誤した結果、27歳で起業することにしました。
──起業してどのようなことを実現しようと考えたのでしょうか?
教育に関わる人の輪をスピーディに広げていって、多くの価値観に触れてもらいながら、それぞれの生徒や先生たちが自分の人生哲学を深掘ることが中心です。
子どもだけでなく教員も外部の人と働くことを通じて自分自身が変わる。そして複業先生として教える人も人生が豊かになっていく。このパーパスを実現するには、学校やNPOというフレームワークよりも、ファイナンスや組織・戦略作りの柔軟性が高いスタートアップの方が社会的なインパクトが生み出せると思いました。起業前に滞在したシリコンバレーで、歴史ある産業にスタートアップが飛び込み、構造的な変革を起こしているのを目の当たりにしたというのもあります。