教育

2023.09.15 11:30

ギャルが校長に。渋谷に「夢につながる居場所」をつくりたい

田中友梨

21歳の若さで『egg』編集長に

ただ、しだいに世間のギャルブームは下火になり、2014年には『egg』が休刊。赤荻も渋谷の街の活気のなさに、寂しさを感じるようになっていた。

18歳でギャルサーを引退すると、広告代理店MRAに入社。イベント制作やインフルエンサーへの商品PRの依頼など、ギャルサー時代の経験を生かしながら働いていた。そんな中、所属会社に「『egg』をウェブで復活させたい」という依頼が舞い込む。

「『egg』への愛と憧れは誰よりも強い。私しかいない」と、自ら編集長に立候補。21歳にして編集長兼広告営業として担当することとなった。2018年3月に、『egg』はウェブサイトとYouTubeチャンネル、SNSを中心としたWeb版として復活した。

「復活当初は賛否両論ありました。全盛期の『egg』世代からは『こんなのギャルじゃない』と言われることも。SNSが普及したことで、ギャルの種類や系統が増えていて、私たち編集部としても、一人ひとりの個性を活かして発信するようにしていたので。ギャル文化を再燃させたいという夢と、1年以内に雑誌を作るという目標に向けて、失敗を恐れずとにかくチャレンジを繰り返しました」

それまで、コンテンツ制作の知識や経験はなかった赤荻。それでも、赤荻だからできたことがある。そのひとつが、SNSの活用だ。セルフプロデュースに長けた投稿者を見定めて積極的にモデルに勧誘。さらに、YouTubeでギャルの個性や魅力を引き出す動画を配信し、着々とファンを増やした。

その後、Twitterで「1万リツイート達成で雑誌『egg』が復刊」と宣言。『egg』を愛読していた世代のみならず、現役の中高生など幅広い層から支持を獲得し、わずか2時間足らずで1万リツイートを達成した。そして2019年5月1日、新元号「令和」の始まりと共に『egg』は復刊を遂げた。

復刊後の『egg』では、2022年度上半期ブレイクタレントランキングで1位を獲得したゆうちゃみや、恋愛リアリティ番組『太陽とオオカミくんには騙されない』(ABEMA)の出演で人気を博した伊藤桃々らを輩出。赤荻は新たなギャルブームを生み出した。その功績が認められ、2018年にはMRAの社長に就任している。

「『egg』を復活させなかったら、『ギャル』というキーワード自体、今の若い子たちにまったく知られなかったかもしれない。ギャルは日本の文化だと思っているので、絶やさずに来られたのは良かったなと思います」
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文=堤美佳子 取材・編集=田中友梨 撮影=小田光二

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