「会員制の卸売業者」と名乗るコストコだが、実は圧倒的に個人客向けの小売で売上を上げている。
直近の決算でも日本円換算で約33兆円の売上を上げ、(税前・償却前)利益で2兆円を上げている。コロナ禍の間も株価を落とさず、それ以前と比べても株価総資産は倍以上に膨れ上がっている。
セルフレジでの「悪用」に危機感
そのコストコだが、入場者にもれなく会員証を提示させ会員だけを入場させていることと、レジの決済時点でも会員証をカードリーダーに読ませないと会計が進行しないようにするなど、会員に対する監視運用が厳しいことでも知られる。しかし、近年、セルフレジの導入で、会員の友人や親戚が年会費を払わずにコストコを利用するむきが増えていた。
日本のコストコと違い、アメリカのコストコは会費も高く、約2倍の年60ドル(約8400円)。ミドルユーザーであれば、ポイントが高く稼げるからとプレミアム会員になることがほとんどで、それは120ドルと倍の年会費となる。
しかし、 一部のユーザーは、友人からメンバーズカードを借りて、セルフレジに並べば、通常のチェックアウトレーンでの身分証明書要件を回避できることに目をつけ、これがなかば常套手段化していた。
もともとセルフレジは、それほど多くない商品点数の決済に、長い列に並んで順番を待つことがなくてすむようにと設定されたものであり、コストコ側にも人件費削減のメリットがあった。
しかし、インフレ圧を逃れて、コストコにちょっと寄ってみるという非会員が味を占めてくると、たくさんの商品点数があってもセルフレジに並ぶという現象が多く見られていた(言うまでもなくコストコの方針では会員カードの譲渡不可)。
コストコは、先月、非会員の買い物客がセルフレジのレーンで他人の会員カードを使用していることを問題視しているとし、「セルフサービスレジで会員カードに写真がない場合は、写真付き身分証明書の提示を求める」と付け加えた。
売上が上がるんだから、多少のルール外ユーザーを認めるべきではとの声はいつもある。実際、「会員か非会員かで、その中間はない」という白黒はっきりしたコストコの会員制度運用は、お試し期間もないわけで、マーケティング上、不得策なのではという声も長くある(ちなみに日本のコストコでは、プリペイドカード制度を設けて、「お試し期間」をつくっていたが、去年、この制度は廃止されている)。
「ニューヨーク・タイムズ」の取材に対し、経営コンサルティング会社「カーニー・コンシューマー・インスティテュート」を率いるケイティ・トーマス氏は、「時折買い物をする人が友人のコストコカードやQRコードを借りるのは不合理なハッキングではない」と述べ、新たな有料会員登録につながると断言している。