しかし、これもロシアや北朝鮮と同じ、中国のストーブパイプが招いた現象だという。中国では、軍や政府機関などが、習近平国家主席に対する忠誠競争を繰り広げている。相互の政策調整が足りないため、しばしば、矛盾した行動が起きるようだ。中台関係などに詳しい東京大学東洋文化研究所の松田康博教授は「習近平政権は対外政策における戦略性や柔軟性を失っていますから、こうしたちぐはぐな対応が多くの領域で繰り返されています」と語る。松田氏は「中国による全面禁輸措置は、中国のCPTPP(米国をのぞく環太平洋連携協定)への加盟申請や、日本からの投資促進にはマイナスですが、それらは別の部門が担当しているので、積極的な働きかけを続けるはずです」と指摘する。
相手がバラバラな動きを仕掛けてきたら、どうなるか。答えは「ドベネックの桶」にしかならない。バラバラな長さの板片を集めて作った桶では、一番短い板片の高さまでしか水をためることができない。せっかくの日中関係改善の動きという「長い板」も、「全面禁輸」という関係を悪化させる「短い板」に効果を消し去られてしまうだろう。松田氏は「全面禁輸の問題は長期化するでしょう」と語った。
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