スタートアップ

2023.09.01 11:30

ビル・ゲイツも認めたCO2封じ込め企業、コダマ・システムズの挑戦

林業にチャンスを見出した起業家

ダートマス大学で工学と環境学の学位を取得したジェンキンズは、カーネギーメロン大学でロボット工学の修士号を取得する傍ら、中古のロボット機器の販売を開始し、その後、機械学習を使って農家の土壌分析を支援する会社を共同創業した。

しかし、2019年に彼は、マサチューセッツ工科大学(MIT)でMBAを取得する際、競争の激しいアグテック(農業テクノロジー)分野よりも林業にチャンスがあると考えはじめ、2021年に労働力不足を解決するための林業ロボットを開発した。

彼はまた、この業界のもう1つの課題に気づくことになった。ジェンキンズは、イェール大学の炭素封じ込め研究所(Carbon Containment Lab)で、巨大なバイオマスの保管庫について聞いたことがあったが、これらのバイオマスを一体どうするのだと思っていた。そして共通の友人から、33歳の地質学者でダートマス大学で修士号を取得したジミー・ヴォーヒス(Jimmy Voorhis)を紹介され、手を組むことにした。ヴォーヒスは、古い鉱山をバイオマス埋蔵地として再生させるアイデアに夢中になっていた。

間伐材を地下に埋めるというアイデアは、大気中のCO2を回収する複雑なテクノロジーに比べればローテクのように思える。石油大手のオクシデンタル・ペトロリアムやエクソンモービルらは、大気からCO2を吸い上げ、パイプラインで輸送して地下に貯留しようとしている。これらの企業は、インフレ削減法のおかげで、回収したCO2の量に応じた税額控除を受けられる。

木を伐採してペレット化し、石炭の代わりに燃やすのであれば、同様な税額控除が受けられる。しかし、今のところ、間伐材の埋設には適用されない。

「大規模に炭素を除去する方法を考えるのなら、自然から学んだり、自然を利用したりしないほうがおかしい」と、マイクロソフトの元最高環境責任者で、現在は投資会社Haveli Investmentsに勤めるルーカス・ヨッパ(Lucas Joppa)はいう。「人類は、46億年の歴史を持つ地球ほど効率的に大気からCO2を除去したことはないのです」

バイオマス埋設のパイオニアとして知られるメリーランド大学の大気科学教授のニング・ゼン(Ning Zeng)によると、伐採されたばかりの1トンの木材は、重量の約50%が炭素であり、腐らせたり燃やしたりすると1トン分のCO2を大気中に放出するという。つまり、1トンのバイオマスを地中に埋めると、1トン分のCO2の排出を防げることになる。

ゼン教授自身も、Carbon Lockdown(カーボン・ロックダウン)というスタートアップを立ち上げ、メリーランド州のポトマック近郊に埋設する契約を結んでいる。彼は、その埋設によって発生した炭素クレジットを、ナスダックが支援する炭素除去のマーケットプレイスのPuro.earthを通じて販売している。

しかし、バイオマスの埋設事業に大規模な資金を呼び込むのは難しい。なぜなら、この事業は気候変動につながる産業活動を置き換えるものではなく、人々の役に立つプロダクトを生み出すものでもないからだ。

一方、コダマ社のジェンキンズは、森林の健全性を保つために伐採された木材を埋設することに注力している。さらに同社のヴォーヒスは、新たな土地を掘るのではなく、廃坑や採石場をバイオマス貯蔵に転用することを目指している。「私たちはCO2を完全に封じ込めます。古い採石場を持っている人がいたら、教えてください」と彼は語った。

forbes.com 原文

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事