同社の創業者でCEOのメリット・ジェンキンス(Merritt Jenkins)は、1年前に、ボストンからカリフォルニア州のシエラネバダ山脈のふもとにある人口2500人の小さな町のトウェインハートに引っ越した。そこでは、長さ7.6メートル、重さ17トンの木材伐採機のテストが進んでいる。
木材の伐採業者はスキッダーと呼ばれるこのような機械を使い、何トンもの伐採木を森から運び出している。コダマ社が開発したスキッダーは、衛星インターネットと高度なLiDARカメラを搭載し、夜間でも少数の作業員で作業が行える。
しかし、同社の計画で最も興味をそそられるのは、暗闇での木の伐採ではない。2022年12月にビル・ゲイツのブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ(BEV)などから660万ドル(約9億7000万円)のシード資金を調達したコダマ社は、伐採した木を地中に埋めて、気候変動を遅らせ、売却可能なカーボンオフセットを得ることを計画している。また、将来的に米国政府の税額控除も受けたいと思っている。
従来のカーボンオフセットの考え方は、大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収するために木を植え、排出量をオフセット(相殺)したい大手企業などにクレジットを売るというものだ。しかし、科学者たちによれば、伐採した樹木を地下に埋めることで、それらの木々が燃やされたり、枯れて地面で腐る時にCO2を放出することを防ぎ、地球温暖化を抑制できるという。この方法は、除去が必要な温室効果ガスの量をある程度引き下げるための、比較的安価で簡単な方法になるかもしれない
ここ数年のカリフォルニア州の大規模な山火事は、人々の重大な脅威となり、2020年の山火事は、同州が過去15年間に削減した温室効果ガスよりも多くのCO2を排出したとされている。この問題に対処するため、米森林局は今後10年間で、カリフォルニア州を中心とする西部の森林7000万エーカーを間伐し、10億トン以上の木質バイオマスを生み出そうとしている。このような間伐材は、一部は市場に出回るが、残りのほとんどは焼却されている。コダマ社はその代わりに、間伐材を無酸素状態で保管し、腐敗から守るために設計された保管庫に入れて埋めようとしている。
コダマ社は、ベンチャーキャピタルからの資金に加え、カリフォルニア州の森林消防局などからすでに110万ドルの助成金を得ており、最初の400トンの埋設木材に紐づくクレジットの購入契約を獲得している。これらのクレジットは公開市場で1トンあたり200ドルで取引されるはずだ。同社は、将来的に年間5000トン以上の木を伐採して埋設したいと考えている。