また、踏切事故のうち、42.9%が歩行者の渡り遅れに起因するもので、そうした事故を防ぐために、線路内の滞留を検知する踏切支障検知装置を設置することが一般的だ。ただ、こうした装置は、クルマなどの大きな物体は高精度に検知できるものの、自転車や車椅子、ベビーカーなどといった小さな物体の検知は、精度を向上させることが課題とされてきた。
そうした状況のなか、関東鉄道とコシダテック、ヤシマキザイ、NTTコミュニケーションズの4社は共同で、大小の物体を問わずにリアルタイムで検知する「踏切内AI滞留検知システム」を開発。常磐線の海老原踏切道に設置した実証実験を開始している。
本システムは、市販されているネットワークカメラを踏切に設置。その映像を5Gネットワークを経由し、利用する場所に近い拠点にサーバを設置し5G通信のリアルタイム性・セキュリティ性を図るサービス「docomo MEC」へ送り、AI技術で映像を解析して滞留物をリアルタイムで検知。それを運行管理者へ伝えるというもの。
これにより、電車が踏切へ接近する際に、線路内に滞留する物体を検知したら、即電車の運転士へアラートを通知することで、事故を未然に防げることになる。
今回の実証実験は7カ月間実施し、本システムの有効性を確認するとともに、機能改善を図っていくとしている。また、この技術を応用し、鳥獣侵入やホームからの転落、駅構内の異物検知にも対応していき、鉄道運行の安全対策に貢献していきたいとしている。
専用カメラを必要とせず、市販のネットワークカメラを使うことでコストを削減しつつ、AIを活用して正しく判断し管理者の負担を軽減できるのであれば、踏切の非常ボタンだけに頼ることなく、かなり有用なシステムではないだろうか。最終判断を人間の目で行うことで、誤ってアラートを出すというミスも低減できるはず。さらにAI処理技術によって、例えばホームでフラフラしている人や喧嘩している人を認識してアラートを出すとか、さまざまな応用が効くと思うので、今後も積極的にいろいろと取り組んでいってほしい。
出典:NTTコミュニケーションズ「踏切内AI滞留検知システムによる実証実験を開始」リリースより