ビジネス

2023.08.30 07:30

世界最大「化粧品の巨人」とタッグ 日本発の新興が描くコスメの未来

コスマックスジャパン代表の魚在善とWackerCOOの鹿田将斗(撮影=曽川拓哉)

攻めのマーケティングにも前のめりな韓国企業

──お互いをパートナーに選んだ理由について聞かせてください。
 
:日本は代理店を通して商品を小売り店舗に卸すという文化があり、その中に入りにくい市場構造と言えます。実は私は2021年まで、韓国発スキンケアブランドであるメディヒールジャパンの代表をしていて、Wackerからの支援を受けていました。彼らは当然日本の感覚を知り尽くしていますし、そのうえで市場と消費者をよく分析して商品に合わせた施策を提案してくれます。
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あとは、日本の化粧品業界はどこもテレビCMや雑誌広告といった伝統的なマーケティング施策や他社を真似て旬のトレンド施策を取りがちですが、Wackerの失敗を恐れずに新しいことに挑戦するところも好んでいます。
 
メディヒール時代、私たちの想像を超える結果を出してもらえました。
 
鹿田: 大前提としてマーケティングで最も重要視している事は「消費者理解」です。ユーザーが何を求め、なぜ求めているか。これを突き詰め、提供価値を見出していきます。そのうえで最近では、提供価値の届け方にエンタメ要素を加えており、インフルエンサーと企業が本音をぶつけ合う台本なしの対談番組など、リアリティ系コンテンツをマーケティングとして展開するようにしています。

実際にやったのはクライアント企業に撮影日だけを伝え、その日にいきなりインフルエンサーが韓国本社に乗り込む。そして会議室をいきなりバーンと開け、カメラ回し始め、企業や商品について根掘り葉掘り聞くというものです(笑)。
 
そうすると、クライアントの生々しい驚いた表情や本音が出てきやすい。いまの視聴者は嘘やフェイクをすぐに見抜く一方、リアルさに共感するんです。そのため、PR表記がついている私たちの動画も、TikTokやYouTubeで何十万、何百万回という再生回数を記録しています。

ただ、こうした施策を承諾するのは韓国企業です。彼らは、僕らのマーケティング手法に「たしかに効果がありそうだ」と納得するものの、多くの日本企業は「炎上するかもしれない」と一歩を踏み出せない印象があります。そして、その一歩の差が両国のコスメ業界の成長率に跳ね返ってきていると感じています。実際に2021年には、日本向けのコスメ輸出額が、韓国がフランスを抜いて1位になり、存在感を増してきています。
 
──新サービスの顧客開拓はどのように進めていきますか?
 
鹿田:コスマックスにすでに数千社の顧客がいるので、そこをあたっていき、まずは韓国や中国ブランドをターゲットにしていきます。そして商品開発のスピードが他国で上がっている状況をみて、日本でも危機感を持ったブランドが我々を利用するようになるという流れを作っていきたいです。
 
ただ、今回紹介したような攻めのマーケティング施策を日本メーカーが実践するかどうかは、とても難しいと思いますが。
 
:私たちは茨城県に敷地面積1.6万平方メートル超の工場を建設中で、2025年以降の稼働を目指しています。そのタイミングで日本で多くの新しいブランドが立ち上がり、支援していければと思っています。
 
鹿田:商品の製造だけではなく、マーケティングや販売まで一気通貫で支援し、市場まで作る。これを私たちは「マーケットプロデュース」と呼んでいますが、この新しい市場を確立したいと考えています。

取材・編集=露原直人 文=小谷紘友 撮影=曽川拓哉

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