「世の中のすべての事象を解明したい」。そんな壮大な野望を掲げるのが、Solafune代表取締役CEOの上地練だ。Solafuneは、人工衛星が宇宙で取得する衛星データの解析技術を開発・提供している。2020年5月の創業後、21年8月にはマイクロソフトのスタートアップ支援プログラムに採択。22年12月、シードラウンドで2億円の資金調達実施を発表した。
宇宙産業は国防などにもかかわるビジネスの領域だ。上地は23年、各国の行政機関やインフラ設備を手がける大企業などに自社技術を提供するため、世界を飛び回っている。特に中東やアフリカ、東南アジアでは宇宙産業が発展していないため、 Solafuneが国から要望を受けるケースが増えているという。「国家プロジェクトのような大きいプロジェクトにかかわることが増えた」と上地は話す。
「宇宙は、国と国の事情が絡むテーマ。その点、日本発のサービスであることが国際情勢をふまえ、ユーザーとなる国から好意的に受け入れられるケースもあります」
技術提供の一方でSolafuneが運営しているのが、衛星データや地理空間データを解析するコンテストだ。Solafuneがオンラインで公開するデータセットを、エンジニアがコンテストの課題を受けアルゴリズムを開発して解析。解析結果が優秀なアルゴリズムは、そのソースコードを抽出してSolafuneが買い取り、API化やソフトウェア化して企業向けに提供する。参加者は世界中から集まり、マイクロソフトや画像生成AI「Stable Diffusion」開発のStability AIといった海外テック企業ともコンテストを共催している。
幼い頃に「世界を数式で記述する」学問である理論物理学に興味をもった上地は、孫正義の『志高く』を読んだことをきっかけに、沖縄の高校を卒業して米UCバークレーの応用数学科へ入学。在学中のスタートアップやVCでの勤務を経て、衛星ビジネスの市場の伸び、そして「衛星データを解析する技術をつくれば、地球で起きていることを数式化できるのでは」と考え、起業した。
Solafuneのミッションは、“Hack The Planet.”。これに共鳴して、衛星を打ち上げる宇宙開発企業の元メンバーや物理学者など、同社には世界からメンバーが集まっている。
「“Hack The Planet.”は『地球上で起こるあらゆることを解析する』という意味。EarthでなくPlanetとしたのは、例えば将来、月や火星にも人工衛星が上がったとして、そこで得られるデータも解析したいという思いからです」
Solafuneがまず目指すのは、世界最大の衛星データプラットフォームだ。
「全世界約190カ国あるうちのほぼすべての国にコンテストの参加者がいる。そんな状態を、今後3年から5年で実現したいです」
うえち・れん◎Solafune代表取締役CEO。学生時代は米国カリフォルニア州の大学で応用数学を専攻。在学中に複数のスタートアップでのソフトウェアエンジニアやVCなどの経験を経て、人工衛星の増加と衛星データの利用ニーズの高まりに注目し、2020年に同社を創業。