米住宅ローン金利が記録的な上昇 80年代リセッション時と状況酷似

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米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)が17日に発表したデータによると、週次の30年固定住宅ローン金利は平均7.09%と2002年以来21年ぶりの高さになった。2年前との比較では1980年前後のリセッション(景気後退)以来みられなかった急速な伸びを示している。リセッション懸念が依然としてくすぶるなか、当時と現在の経済状況が不気味なほど似ている点が注目される。

16日までの1週間の30年固定住宅ローン金利は、2021年の同じ週の2.86%からおよそ150%上昇している。1971年までさかのぼるフレディマックのデータをフォーブスが分析したところ、2年間の上昇幅としては過去4番目に大きかった。最も大きい3つの上げ幅も過去1年に記録されている。

米国の過去7回のリセッション突入時、30年固定住宅ローン金利は2年前に比べ平均11.6%上昇していた。過去50年の2年間の平均上昇率は1.1%となっている。

この1年より前に住宅ローン金利が2年で50%以上上昇した例は、1979年から1981年にかけてしかない。当時、米国ではインフレが高進し、米連邦準備制度理事会(FRB)が積極的な利上げを進めるなか、リセッションに2回見舞われた。物価の状況やFRBの金融政策は現在と似ており、米経済が今後数カ月リセッションを回避できると期待している向きには気がかりな材料だろう。

住宅市場「再び凍りつく」おそれも

全米不動産協会(NAR)のエコノミスト、ローレンス・ユンの見方は、さらに懸念を募らせるものかもしれない。ユンは金融情報サイトのマーケットウォッチに、30年固定住宅ローン金利は8%に達する可能性があり、その場合、不動産市場は「再び凍りつく」だろうと語っている。住宅市場は国内総生産(GDP)で計測される経済活動の重要な構成要素だ。

米国の住宅ローン金利は、FRBの政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利に緩やかに連動する。ジェローム・パウエル議長率いるFRBが40年前のポール・ボルカー議長時代以来、最も急速なペースで政策金利を引き上げるなか、住宅ローン金利は昨年、わずか半年で約3%から6%超に跳ね上がった。1980年代には18%超に達していた。

今回の利上げサイクルはまだ深刻な痛みをともなう経済状況はもたらしていないものの、いくつかの指標では依然としてリセッションが視野に入っている。たとえば、短期的な景気に対する投資家の信頼度を示すものとみることができる長短金利差からは、米経済が向こう1年にリセッション入りする可能性が65%ほどあると見込まれている。米10年物国債の利回りは今週、2008年以来の高い水準に上昇し、景気への信頼がさらに崩れてきていることがうかがわれる。

住宅ローン金利が倍になった影響もあり、住宅価格も高騰している。不動産仲介会社レッドフィンのデータによれば米住宅価格の7月の中央値は42万2137ドル(約6150万円)と、1年前の31万8100ドルから10万ドル以上も高くなっている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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