Frontiers in Environmental Scienceに掲載された論文は、過去のデータと異常気象を包括的にレビューし、南極地域における氷の減少や海洋熱波などはますます激化し頻繁になっていることは「事実上、確実」であると結論づけている。
人為的な温室効果ガスの排出が、南極における最近の異常気象の原因となっている可能性がある。記録的な熱波によって、昨年のある時点で気温は季節平均より38.5℃も上回り、-10.1℃を記録した(南極ではそれが猛暑だ)。
継続する海氷の消失は悪循環を招く恐れがあると著者らは警告する。海氷面積の減少は、南極が太陽光を反射する能力を減少させ、融解の加速に寄与する可能性がある。今年の冬、南極における海氷の形成は観測史上最低となり、約100万平方マイル(約260万平方キロメートル)の氷が失われた。
海水の温度上昇は、さらなる融解という問題を引き起こす可能性がある。海面から200~400mの深さを流れる周極深層水(CDW)が温められると棚氷の水中部分や、さらに氷河の一部を削り取ってしまう。
高い水温は、地域の生態系にも災いをもたらす。オキアミは0.5~1℃の範囲内で生息しているが、それ以上の温度変化があると食物連鎖の複数段階に影響を与えるほど個体数が激減する。
温室効果ガスの排出は、間違いなく南極の異常気象の頻度を高める一因となるのは間違いないと著者らは警告し、現在の気候変動対策が、南極大陸を保護という国際公約を守るために十分かどうかを検討するよう政策立案者に促している。
今夏、全世界の都市を襲っている熱波や洪水について考える際に、世界一寒い南極を思い浮かべることがあまりない。しかし南極の約1370万平方キロメートルにおよぶ氷河は、太陽光を反射して海水の温度を調整する重要な役割を担っている。もし氷河がすべて溶けると、約2500万立方キロメートルの水が流れ出し、海水面が約60メートル上昇する。
一方、大西洋の気象パターンを制御し、海洋生物を維持している重要な海流である大西洋南北熱塩循環(AMOC)は、予想されていたよりも早く崩壊し、また1つの自然過程が消え始めることになると推測されている。
南極大陸は、活気に満ちていながらも脆弱な海洋生態系の中心であり、またその氷層には100万年近い気候の歴史が刻まれ、貴重な科学的資源となっている。同大陸は1961年の南極条約によって国際的に共有され、保護された地域となったが、年々その脆弱性は高まっている。現在、南極で起こっている極端な気候変動は、近い将来起こるであろう異常気象の前触れにすぎない。
先に、氷河湖決壊(融解した氷河の水が、弱体化したダムをこじ開ける現象)がアラスカ州の州都ジュノーで洪水を引き起こした。メンデルホール湖の水位は、新記録となる約4.56mに達し、建造物を破壊し、地域には避難指示が出された。氷河湖の決壊は今後増えていくばかりだと予測されている。
(forbes.com 原文)