理論は以前からあったが、何らかの証拠が見つかったのはこれが初めてだと関係する天文学者らはいう。
「同じ1年間と同じ居住条件を共有する2つの世界を誰が想像できるでしょうか?」とスペイン・マドリードの宇宙生物学センターの学生で、今週Astronomy & Astrophysics誌に掲載された論文の主著者であるオルガ・バルサロブル・ルーザはいう。「私たちの研究結果は、このような世界が存在しうることを示す初めての証拠です」
PDS 70と呼ばれるその恒星系は南半球の星座であるケンタウルス座にあり、太陽系から400光年離れている。木星サイズの2つの惑星、PDS 70bとPDS 70cの存在はすでに知られていたが、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)を使用している天文学者チームは、PDS 70bと同じ軌道上で別の惑星を発見した。
中央の恒星を公転するPDS 70 b(黄色い実線で囲まれている)。天文学者チームは同じ軌道(黄色い実線の楕円)上で、デブリの雲(黄色い点線で囲まれている)を発見した(ALMA (ESO/NAOJ/NRAO) /Balsalobre-Ruza et al.)
ペアの惑星
ALMA望遠鏡の画像は、デブリの雲がもう1つの惑星である可能性を示唆しているが、明確に言い切るだけの詳細は提供していない。そのため、惑星の1つは形成過程にあるとも考えられている。つまり実質的に、2番目の惑星がデブリとちりの雲であることを意味している。似たようなもの(トロヤ群)は太陽系には存在しているが、系外惑星付近で見つかったのは初めてだ。
太陽系にあるトロヤ群小惑星は、2つの雲になって太陽を周回している約1万2000個の小天体群であり、一部は木星の前方を、一部は木星の後方を周回している。
「木星の子どもたち」とも呼ばれるトロヤ群は、惑星と太陽系が形成、進化した後に残された化石であると考えられている。
この図は南半球の星座ケンタウルス座と、晴れた夜空なら肉眼で見えるほぼすべての星を示している。恒星、PDS 70は赤い円で示されている(ESO, IAU AND SKY & TELESCOPE)
「系外トロヤ群」はユニコーンのようなもの
PDS 70をいっしょに周回するこの2つの惑星は、太陽系以外の恒星系に木星サイズの惑星とトロヤ群がある初めての事例「exotrojans(系外トロヤ群)」かもしれない。「今のところ系外トロヤ群はユニコーンのような存在です」と共著者で宇宙生物学センター上級研究員のホルヘ・リオ・ボクスはいう。「理論上は存在することが許されていますが、誰も検出したことがありません」
2030年に予定されているALMA電波望遠鏡アレイのアップグレードによって「系外トロヤ群」の検出と確認は現在よりも容易になると研究者らは述べている。
「木星のように1つの惑星が何千個もの小惑星と軌道を共有することは想像できても、複数の惑星が同じ軌道を共有するというのは私にとって衝撃的な出来事です」とバルサロブル・ルーザはいう。
NASAのルーシー・ミッション
木星軌道上のトロヤ群は2つの主要グループに分けられる。1つが木星の前方、もう1つが後方を周回している。それらは木星周辺のラグランジュ点を周回しており、木星と太陽の引力が平衡状態にあるために安定している。2021年に打ち上げられたNASAのLucy(ルーシー)ミッション探査機は、木星トロヤ群のうち6個をフライバイする12年のミッションに入ってから2年になる。6個中4個は二重小惑星(互いに相手を周回する2つの小惑星)だ。探査機は火星と木星の間にある小惑星帯内の小惑星1つもフライバイする。
ルーシー探査機はミッション完了後、太陽を永遠に周回する。探査機にはアルバート・アインシュタイン、カール・セーガン、マーチン・ルーサー・キング、ビートルズのメンバー4人全員などからのメッセージが収められたタイムカプセルが載せられている。
(forbes.com 原文)