「雨のにおい」はどこから来るのか?

Dan Kitwood/Getty Images

先日、大学生の娘が私のことを変だと言った。傷つけるつもりはなかったそうだ。娘が指摘したことの1つは、からしやマヨネーズ、サラダドレッシングなどに対する私の奇妙な嫌悪についてだった。きっと、私のにおいに対する敏感さも、娘にとって変人の基準を満たすのは間違いないだろう。

雨の日に、私はしばしば雨のにおいを感じる。皆さんの多くも雨のにおいがわかると思う。雨のにおいは「ペトリコール」と呼ばれている。これについて知っておくべきことを以下に記す。

ペトリコールは、雨のにおいを説明するための用語だが、実際のにおいは地面から発せられる油分や化学物質によるものだ。このにおいは、分解された有機物が土や岩石、鉱物と混ざり合うことで発生する。ペトリコールという言葉は、ギリシャ語の「ペトラ」(地球の石)と「イコル」(神の血に関連する神話の言葉)に由来する。

最近、著名科学ジャーナリストのアンドリュー・レブキンが、米国化学会(ACS)のとても役立つウェブサイトを教えてくれた。同サイトで公開されている資料にはこう書かれている。「ペトリコールはオーストラリアの科学者らが1964年に提唱した用語で、雨に関連する独特な土のようなにおいを言う。このにおいは、雨水とオゾン、ゲオスミン、植物油などの化合物に由来する」

上に出てきた用語のいくつかには、馴染みがないかもしれない。私は大気科学者なので、オゾンについては説明できる。オゾンは、成層圏では有害な紫外線から私たちを保護してくれる存在だが、地表では汚染物質にもなりうる。米国化学会のウェブサイトによると、雷が発生すると、「酸素分子と窒素分子(いずれも2つの原子からなる)が分裂し、再構成されて一酸化窒素(NO)とオゾン(O3)が作られる」。雨粒によって地表に運ばれたオゾンはペトリコールにかおりを付加する。

では、ゲオスミンとは何か? 同サイトによると、「放線菌と呼ばれる土壌中の細菌が、ゲオスミンという化合物を分泌し、それが雨粒によって土壌から大気へと放出される」のだという。ACSのライターは、人間の鼻はゲオスミンを、5 ppt(1pptは1兆分の1)以下の濃度でも感知できると書いている。降雨の際に放出されるステアリン酸、パルミチン酸などの植物油も、ペトリコールのにおいに寄与している。

興味深いことに、この文章を書くために文献を調べていた時、米ロックバンドのPhish(フィッシュ)による「Petrichor(ペトリコール)」という楽曲があることを知った。さらに、同じ名前のワイン用ブドウ園もある。何とも驚きだ。

皆さんが今後、雨のにおいに触れた時、これまで以上にその香りを楽しめるようになれば幸いだ。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫・編集=遠藤宗生

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