湯浅:私たちとしてもデータ提供はしたいところですが、業界のしがらみなどから難しい部分があります。業界を問わず、区全体でのデータ連携といった、より大規模な協力を目指していく必要がありそうです。
渋谷区での新たな取り組みが成功すれば、民間の懸念点であるビジネス的なメリットに関しても、成功モデルを他都市にも展開させることで利益を得られる可能性が出てくるはずです。
政井:再来年に迫る大阪・関西万博の準備では、すでに各建設会社の連携ははじまっていますね。
限られた工期で多くのパビリオン(展示場)を建設する必要があるため、工事車両などのデータを共有しています。そのデータを町づくりでも応用できないかとは考えています。
災害時シミュレーションで活用期待
豊田:具体的に、協力をはじめやすい分野はありますか。澤田:まずは安全と安心に関する分野だと思います。日本は災害の多い国ですから、メタバースやデジタルツインの技術をフル活用した発災時のシミュレーションは最も取り組みやすいと言えます。
また、日本は資源に乏しいことから、再生可能エネルギーをはじめとする新たなエネルギーの開発技術も重要だと考えています。人々が大勢集まる渋谷区としても、今後20年30年以内に送電の町に変貌しなければなりません。
現在の電力技術では、北海道の風力発電で生み出したエネルギーを東京に送るとなると、送電時に電力が100分の1ほどまで減少してしまいます。今後は送電の際にエネルギーを維持させる技術と同時に、人々の密集をエネルギー創出に繋げる技術も求められます。
実際、すでに研究例は多くあり、道路にかかる圧力や窓ガラスへの紫外線をエネルギーに転換する技術は開発されつつあります。技術がさらに進歩すれば、渋谷区にある高層ビルが巨大な送電設備になる可能性もあります。
豊田:都市部ならではのエネルギー技術を開発し、デジタルツインやメタバースとの連携を通して都市の将来も予測していくと。官民だけでなく、住民も含めてビジョンを共有した町づくりが今後は重要であり、それをぜひ渋谷区から世界に発信してもらいたいですね。