医師の診断に基づいてマスクを着用する場合は、「(マスク着用義務が)免除される理由と期間の見込みを明記した」メディカルノート(医師の診察を受けたことを示す文書)を提出することも新規則では求めている。診断内容については開示しなくてよいとしているものの、こんなことが従業員のプライバシーを侵害せずにできると会社側は思っているのだろうか。
メディカルノートの提出義務は従業員側にとって時間や金銭の面でも負担になる。多くの人はかかりつけ医や、すぐ診てもらえる医師がいない。また、障害があることの証明を求めることは、マスク着用を事実上の受け入れ条件にしていると判断されれば、米国障害者法(ADA)違反とみなされるかもしれない。
作家のジェシカ・ワイルドファイアはブログで、イン・アンド・アウトの新ルールを手厳しく批判している。イン・アンド・アウトは「過去には、従業員の行動を縛ったり、本人の意思に反することを無理やりさせたりはしたくないと言って、ワクチン接種の強制を断じて拒んだ」くせに、今回は個人の権利や自由をいっさい顧慮せずにマスク外しを義務づけたのはおかしいではないかと。
ワイルドファイアは、同様の規則を採用する企業が今後増えそうだと予想したうえで、「ファストフード店の労働者たちは、笑顔を見せる義務など誰にも負っていない」と強調している。
ニューヨークでは、エリック・アダムズ市長が店舗オーナーらに「マスクを外さない人の入店を認めてはいけない」と求めた(編集注:犯罪対策で要請した)。入店後、マスクを着けたい人は再び着ければよいとしたが、やはりこうしたマスク外しの義務化に対しては、米国障害者法やニューヨーク州の人権法に違反するという異議が出ている。