GoogleはAdWordsの発明で儲かったというのがより本質をついた評価
ーChatGPTの登場によりGoogle検索の利用が減ると危ぶむ声もありますが、どのように見ていますか。
Googleは最初に検索エンジンを作った会社ではなく、既に様々な会社があった中で、最後に検索エンジンを作ってトップに立った会社です。
Googleの評価については様々なものがありますが、Googleは検索エンジンで儲かったというよりAdWordsの発明で儲かった、というのがより本質をついた評価だと考えています。
検索連動広告はOvertureも行っていましたが、Googleが大規模に実装して一気に売上を作れるようにしたのです。
検索エンジンが優れていたのも事実ですが、事業的にうまくいったのは検索連動広告をうまく実装できたからでしょう。
つまり、OpenAIがAIに関して高い技術力を持っていることは事実ですが、技術力だけがビジネス的な成功につながるわけではなく、それをどうマネタイズするかや現在抱えているユーザーの数なども重要だということです。
GoogleはGmailなどオープンになっていない大量のデータを保有している点でAI開発では有利である
ーすると、ChatGPTが便利だからイコールでそのほかサービスがディスラプトされるという単純な話ではないということですね。
過去数十年のテクノロジーの流れを見ると、GAFAに対抗する会社は多数登場しましたが、テクノロジー的にGAFAよりも優れていたにもかかわらず、GAFAがそれらを潰したり、買収しているケースが山のようにあります。
そういった事例を踏まえると、OpenAIが技術的に優れているイコールでGoogleが終わるという予想は短絡的と言えます。
OpenAIの技術力は優れていますが、AIの差別化にはデータが重要であり、OpenAIはインターネット上に公開されているデータしか学習の素材にできません。
一方で、Googleは昔からこの分野に投資をしており、Gmailなど世の中にオープンになっていない大量の貴重なデータを保有しています。
MetaはFacebookやMessengerのデータにアクセスできますし、私の代わりに私そっくりの文章が書けるAIを作らせるなら筆頭に上がるのはMetaでしょう。
このように、アクセスできるデータというのは、AIの開発において重要な要素の一つなんです。
AI開発では膨大なハードウェアリソースを保有できているかも重要な要素
ーアクセスできるデータ以外にAIの開発競争において重要になる要素はどのようなものがありますか。
AIを実際に実行するためにはハードウェアの性能も必要です。
OpenAIでもGPT-4を動かすためには膨大なハードウェアリソースが必要ですが、クラウド上で行うと非常に高額になります。
そのため、ハードウェアを持ちAIの動作に必要なリソースを持っている会社しか、AIの開発に取り組むことができません。
OpenAIもMicrosoftから出資を受ける前は、資金不足で苦しんでいたという話です。
日本企業もそういった要因によりAIの開発に対して苦戦しているようです。
最終的にAI競争で勝つにはデータと計算機リソースを持っている会社が最も強いことは明らかです。
OpenAIが勝利する可能性はあるものの、GoogleやMetaの方が有望と言えるのではないでしょうか。