互いの価値観を共有する「バリューセッション」
ビジョナリーな組織作りにおいて、リーダーのあり方は組織に大きな影響を及ぼす。自然電力は、風力発電事業会社で同僚だった川戸健司氏、長谷川雅也氏、磯野謙氏の3名によって共同創業され、彼らは現在も代表取締役として組織を率いている。磯野久美子氏は3名の印象について「組織が数十人規模の時期から、人と組織を重要性の高い経営アジェンダに設定していました。世界を見据えた事業展開、『言語や社内のルールがモノカルチャーにならないように』というメッセージもブレていません」と語る。
これを受けて谷本氏が、「3名による共同創業はあまり類を見ませんでしたが、ここ数年は共同創業者という形を取って成功しているスタートアップを世界中で多数見かけます」と印象を伝えた。すると磯野謙氏は「過去に同僚として苦楽を共にした経験があるのが大きい」と関係性の大切さを説いた上で、共同経営における指針を説明した。
「私たち3名は、『こうすべき』や『こうしたい』という理想よりもむしろ、『創業者が独裁的にならない』『短期的な目線で物事を考えない』といった『こうなりたくない』の共有を創業時から大事にしてきました。また、これは創業メンバーだけではなく会社全体でですが、自然電力の価値観を体現する会社のバリューとクルー個人のバリュー・価値観をきっちり理解しようという企業文化があります。個人の仕事観や生活観、家族観を話すバリューセッションを設けているからこそ、ギャップが生まれないのかもしれません」(磯野謙氏)
同社では部署ごとに、社員同士が定期的にバリューセッションを実施。創業メンバーである代表取締役3名も、毎年年末に3日間ほど時間を取り、泊まり込みで実施しているという。谷本氏は、「エンゲージメントの高い組織にヒアリングすると、必ず互いの価値観を共有する習慣があります」と語った。
さらに、事業の方向性を揃えるために機能しているのが、創業時から変わらぬ毎週末の経営者ミーティングだという。現在は、代表取締役3名と取締役陣が、取締役会とは別に毎週日曜の朝6時から2時間ほど、事業について話すミーティングを実施している。
「直近1年は資金調達の話題が大半を占めていました。当社の事業はプロジェクトのスパンが長いからこそ、現在は2030年にマイルストーンを置いて、そこから逆算した事業のあり方や戦略について議論しています。こうした場を設けることで、意思決定スピードも早まります」(磯野謙氏)