経営・戦略

2023.06.13 12:00

フェンダーが世界初の旗艦店 なぜ「東京」を選んだのか?

エドワード・コールは、ラルフ ローレン・ジャパン社長などラグジュアリーブランドで要職を歴任し、2014年にFMICにジョイン。翌年にはフェンダーミュージック代表取締役社長に就任した

現在、政府観光局(JNTO)によると、2023年4月の訪日外国人客数は195万人と前年同月の約14倍に拡大し、インバウンドが急速に回復している。なかでも多くの訪日客が訪れるのが東京。これまで世界72カ国で働き、暮らしてきたというエドワードも「最も洗練され、最高のショッピング体験ができる場所が日本であり東京です」と言う。
地下1階はアコースティックギターの展示販売とイベントスペース。カリフォルニア発のライフスタイルコーヒーブランド「VERVE COFEE ROASTERS」監修のオリジナルカフェ「FENDER CAFÉ powered by VERVE COFEE ROASTERS」も併設(写真はイメージ)
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特に「FENDER FLAGSHIP TOKYO」を出店する原宿表参道エリアは、ラグジュアリーブランドからライフスタイルブランドまで、世界的なブランドの路面店が集まる場所だ。そんな街に出店することで、ショッピング、特にブランド商品への購入意欲が高まっている訪日外国人客に立ち寄ってもらいたいという狙いもある。
3階には、最上級ギターを扱う「Fender Custom Shop」専用フロアがあり、カスタムオーダー用の特別室もある。マスタービルダーと呼ばれる世界で最も熟練した製造技術を持つ職人が楽器を生み出す特別な工房だ(写真はイメージ)

楽器の需要は続くのか?

コロナ禍の日本でギター需要が再熱したのは先に書いたとおりだが、同時に音楽業界はデジタル化も進んでいる。PCやスマホでも楽曲制作ができる時代において、この先も楽器の需要は続くのだろうか。

エドワードは次のように話す。

「進化は常にどの世界でも起こります。しかし、人が究極的に求めているのはアナログな体験、経験だと思っています。人は、楽器を手に取り、弾くという行為によって楽器とのつながりを感じることができます。その体験を求めている人は多いはずです。それを77年の歴史によって体現してきたのが私たちですから」
エレキギター、ベースとアンプを中心に展示販売する2階。気に入った商品を大音量で試奏できる特設防音ルームもある(写真はイメージ)
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課題は購入後の継続率だ。FIMCが2015年に全世界で行った市場分析では、初めてギターを手にした人の90%が1年以内に演奏をしなくなっていることがわかった。しかし、残りの10%のプレーヤーは、生涯で平均10〜12本のギターを購入しているという。

そのためFIMCは、継続率の向上を目的に様々なサービスを展開している。機能や初心者向けの情報を提供するウェブコンテンツ「Beginner’s Hub」や、サブスクリプション型学習サービス「Fender Play」だ。気軽に楽器を始めてもらい、継続へのモチベーションの維持にもつなげる。

世界的なブランドに続け

「FENDER FLAGSHIP TOKYO」のオープンによって、フェンダーミュージックはなにを目指すのか。5月10日に開催された「FENDER FLAGSHIP TOKYO MEDIA EVENT」で、エドワードはその狙いを語っていた。
プレゼンテーションを行うエドワード・コール
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文=尾田健太郎 編集=田中友梨

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