ルールメイカーが多い日本 足りないのは「プレイヤー」
15年に及ぶ国会議員生活で、大村は「今の日本はルールメイカーこそ多いが、プレイヤーが足りない」と痛感した。だから、愛知県はとことん主体として事業を駆動していきたい、と走る。ただ、大規模プロジェクトこそリソースを消尽しがちだ。戦力の逐次投入と戦線の分散は戦略における「失敗の本質」だ。エンターテインメントにスタートアップ、そしてスポーツと、ホットな領域で勝機は見出だせるのか。「3つのプロジェクトは個々に進めるわけではなく、1本の線として全体を描いています。まず、ジブリパークです。海外から専門性を携えてやってくる高度人材にヒアリングすると、多くの人が『日本のアニメに惹かれてやってきた』と語ります。ジャパンアニメーションが持つコンテンツ力は誰もが認めるところでしょう。ジブリパークは世界から創造性あふれる人材を引きつける磁石になるのです。
愛知国際アリーナはアジアトップクラスの設備に加え、AEGグループのノウハウと発信力でスポーツエンターテイメントの中心地に。ここでも人材を誘引します。集まったクリエイティブな人材はSTATION Aiが結びます。本施設はパリのスタートアップ支援拠点『STATION F』をモデルに構築しました。世界から集まる多様な人材が、愛知からイノベーションを起こす。そのインキュベーターとして機能するのです」
海外からオファー相次ぐ「ものづくりの集積地」の秘密
海外からの人材を引きつける「磁石」は施設だけではない。愛知県はテキサス州をはじめ、各国のアカデミアとも連携を進める。大村は、これらの提携からテキサス大学オースティン校、さらに清華大学のスタートアップ支援機関Tusホールディングスに県職員を長期派遣している。オースティン校の知見、中国スタートアップの起点となった清華大学のノウハウを吸収しているという。名ばかりの協定、覚書の締結ではなく、人材交流を通して先端テックのキャッチアップが進む。なぜ、世界の英知は愛知県と組むのか。
「STATION Aiがモデルにする(パリの)STATION Fもそうですよ。惜しげもなくスタートアップ育成、支援のノウハウを共有してくれます。彼らは世界で最初に日本の愛知とアライアンスを組みました。これは、愛知の製造業の力があるからです。製造業の集積力が違いますよ。私はフランクフルト、シュツットガルト、ミュンヘンにも負けるわけがないと思っています。先人が積み上げてきた技術、研究の集積があるから、海外のパートナーとも組んでいけるのです」