国内

2023.05.31

「愛知からユニコーンを」ものづくり王国が世界から熱視線を浴びる、新たな理由

Governor's Letter 04 愛知県知事 大村秀章

愛知県は製造品出荷額等が44年連続で日本一。自動車産業をはじめ、航空宇宙産業、ロボット産業など多様な産業が集積している。県は独自性・先進性を有する約400社のものづくり企業を「愛知ブランド企業」と認定するなど、バックアップを惜しまない。官民が形成した製造業のアセットが世界に認められ、実効性を持ったコラボレーションとして結実する。

愛知ゆかりの先人に学ぶ「イノベーションの力」

大村は、長い時間をかけて産業基盤を培ってきた先人に敬意を払ってやまない。2022年6月には豊田喜一郎、盛田昭夫に愛知県名誉県民の称号を贈って顕彰した。愛知のベンチャーからグローバル企業に成長したトヨタ、名古屋市出身の盛田が世界へと導いたソニーへのリスペクトがそこにある。

イスラエルのスタートアップ支援機関Start-Up Nation Centralとの提携にも、愛知ゆかりの故人の功績が大きく働いたという。

「杉原千畝──第二次世界大戦中、リトアニアでいわゆる『命のビザ』を発給し、多くのユダヤ人難民を救った外交官です。彼は幼少期を名古屋で過ごしており、愛知県にゆかりのある人物です。イスラエルの人々は、チウネ・センポ・スギハラの名前が出たら表情が一変します。先人によって私たちは世界と過去、現在を共有し、未来を思い描くことができる。これがイノベーションの力ではないでしょうか」

しかし、愛知が誇る自動車産業もEVの台頭によって転換期の真っただ中にある。日本の製造業も総じて厳しい環境にある中、大村は「愛知県の企業群も、発展を目指していくなら変革待ったなし」と危機感を募らせる。ものづくり産業の資産、レガシー技術の集積だけでは、グローバルの総力戦は戦えない。日本のセンターポジションで、大村はどんな旗を掲げるのか。

「豊田喜一郎や盛田昭夫ら、愛知のファウンダーたちを思い出してください。敗戦の焦土から、それでも日本をもう一度創るんだ、という思いで立ち上がった。そこには志と、そして情熱があった。今の日本には彼らのようなアニマルスピリットが求められています。私たちは世界から愛知県に人材を集めたい。そして、豊かなダイバーシティ環境でスタートアップの離陸を支援していきたい。その先に、愛知から世界に飛び立つユニコーンが出てくると信じています」


大村秀章◎愛知県知事。1960年愛知県碧南市生まれ。1982年東京大学法学部卒業後、農林水産省入省。徳島市部長、農協課、企画課課長補佐を経て、1996年に衆議院総選挙で初当選。2001年の小泉内閣発足とともに経済産業大臣政務官に就任。その後、内閣府大臣政務官、内閣府副大臣、厚生労働副大臣等の要職を歴任し、2011年に愛知県知事選挙に当選。現在4期目を務める。

文=佐々木正孝 写真=近藤誠

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