探査機は、太陽系最大の惑星である木星の氷衛星を観測し、生命維持の可能性について探ります。
木星が持つ巨大な衛星のカリスト、エウロパ、ガニメデには、地球の海よりも多い大量の水が存在していると考えられています。本題についてWEFのアジェンダからご紹介します。
(本稿は2023年3月24日にWEFアジェンダに公開され、2023年4月14日に加筆修正されて更新されました。)
イタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイは、1610年に自作の望遠鏡で木星に巨大な衛星があることを発見しました。
そのとき観測された4個の衛星は現在、発見者にちなんで「ガリレオ衛星」と呼ばれています。太陽系最大の惑星である木星では、ガリレオ衛星の発見後も技術の進歩に伴ってさらに70個以上の衛星が見つかっています。
そして今、人類は地球という安全な場所にいながら、これまでにないほど近い距離で木星の衛星群を観測しようとしています。木星氷衛星探査計画「JUICE(JUpiter ICy moons Explorer)」の探査機が、4月14日に南米フランス領ギアナにある宇宙基地から打ち上げられたのです。
この探査機には、木星の衛星の観測記録が記されているガリレオの著書『星界の報告』の一部を複製した銘板が記念として備え付けられています。
JUICEの木星への旅
ESA(欧州宇宙機関)が主導する探査計画であるJUICEは、欧州各国やそれ以外のいくつかの国が参加する国際的なプロジェクトです。探査機は地球を飛び立った後、フライバイを何度か行い、地球や金星から重力アシストを受けて宇宙の遥か彼方へ向かい、2031年7月に木星系に到達する予定です。すべてが計画通りに進めば、そこから4年間木星の軌道を周回し、木星の衛星群をフライバイ観測します。この観測のメインとなるのは、海が存在すると考えられている3個の大型衛星のカリスト、エウロパ、ガニメデです。
これらの衛星には生命が存在する可能性も指摘されています。順調に進めば、2034年12月にはガニメデの周回探査を開始します。これにより、初めて外太陽系にある衛星の周回軌道に入る探査機となります。
探査機を安全に飛行させるには、非常に高度なナビゲーション技術が求められます。その大役を担っているのは、スペイン、アルゼンチン、オーストラリアに設置されているESAのエストラック(Estrack)(追跡ステーションネットワーク)の深宇宙アンテナであり、それを遠隔制御しているのは、ドイツのダルムシュタットにある欧州宇宙運用センターです。
「これは、ESA史上最大の深宇宙ミッション。太陽系最大の惑星の衛星群の周辺を首尾よく飛行しながら35回ものフライバイ観測を実施するのです」と、JUICEのフライト・オペレーション・ディレクターを務めるアンドレア・アコマッツォ氏は語っています。
「JUICEによる木星とその衛星群の探査は、今後10年近くにも及ぶ長丁場。ESAにとって初めての挑戦であり、いろいろ問題が生じても不思議ではありません」。