「社会実装した先に生まれる価値は、自分たちの想定をはるかに超えていました」
コミュニティナースの提唱者、Community Nurse Company CEO矢田明子は、創業6年目までの挑戦をそう振り返る。
コミュニティナースは、看護の視点も生かし、喫茶店やガソリンスタンド等を拠点に地域住民と交流し健康を支える仕組み。病気になる前に、日常的に接点をもち、信頼関係を築いたなかでアドバイスを送り、健康づくりや社会の新しいあり方につなげている。まさに「新時代版おせっかい」だ。
コミュニティナースは島根県雲南市で矢田が実践する個人的活動だったにもかかわらず、ノウハウへの問い合わせは年間250件超。個人向け養成講座事業として2017年に法人化した。以後、自治体・企業向けの社会実装拠点の立ち上げ支援など、提携先は拡大。コロナ禍の21年にはコミュニティナースが個人宅を訪問する健康応援サービス「ナスくる」を開始した。
2年前から社会から強く求められ始めた。問い合わせは自治体3倍、企業5倍と急増した。
「自社の組織開発、組織経営の観点で、コミュニティナーシングを求める会社が増えて驚いた。想定外のニーズに応えて、社会実装をするフェーズに入りました。まさに第2創業期です」
新時代のおせっかいは、海をも越えた。3年ほど前からは海外からの視察が増えたこともあり、イギリスの学術誌へコミュニティナースの論文を発表。海外のシンポジウムに呼ばれ、アジア太平洋高齢者ケア・イノベーションアワードを受賞するなど、その反響は大きい。論文のなかで矢田らは「おせっかい」を再定義している。
「相手の願うことを感じ取り、能動的にかかわってあげると、相手が本当に元気になる。その一歩を踏めるのがおせっかい。世界中にあるそうしたあり方を肯定し、可視化したかったんです」