事業継承

2023.05.17

増加する事業承継 M&Aが日本経済に求められる理由

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企業の将来に道筋をつける

少子高齢化のひずみに直面する日本がこれからどうなっていくのか。労働人口の減少に対し、経営的観点から何をしなければいけないのか。

皆さんに真剣に考えてもらいたい。その上で、解決策の有効手段の一つとしてM&Aがあることをさらに認識してほしい。

地方を拠点にする一次産業を一例に挙げよう。国内経済にとって誰もが不可欠であると分かる重要な分野だ。だが、少子高齢化の波は激しく、「ヒト・モノ・カネ」の「ヒト」を失っては結局、何も回らなくなる。自社単体では事業継続が難しい場合でも、大企業のグループに入れば組織を守ることができる。

M&Aによって地方の雇用も守られ、より規模の大きな企業との新しいビジネスの展開も可能になる。規模の経済は経営の基本だが、企業同士が提携することで無駄を削減でき、より効率のいい経営もできる。

Birgit Reitz-Hofmann / Shutterstock.com

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「創業者は売却が前提」の真意

日本の総人口は2008年にピーク(約1億2800万人)を迎えた。現役世代の急減から、各産業で人材を含めたパイの取り合いは激しさを増している。次の20年、各企業の経営の在り方は、変化を避けられない。

筆者がシリコンバレーでIT業を営む日本人経営者に教えてもらった話を紹介し、結びとしたい。アメリカには「創業者はM&Aで売却することが前提である」という考えがある。日本では少々刺激的な表現にも聞こえてしまうが、真意が分かると納得した。

「会社は創業者のものではなく、そこに携わるみんなのもの。創業者が自らの利益やプライドにとらわれていては、会社が良くなることを阻害してしまう」というのだ。続けて、「創業者の仕事は、『0から1』を生み出すこと。経営者の仕事は、『1を10』にすること。そして、『10を100』にするのは大企業の役目である」、と。

この考えが日本の経営者や文化に合うか議論の余地はあるが、アメリカではこうして大きくなっていく企業が多いのも事実である。
 
M&Aは日本の行く末を左右する重要な経営戦略だ。M&Aが一般的な経営手段になった今、あらゆる情報を収集し、企業の成長につなげていくことが鍵になる。

文=安藤智之

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