シリコンバレーのテック企業らは、男性に比べ女性エンジニアの数が圧倒的に少ない事実を認め、その情報を公開し始めた。そして今、その問題の解決に努めているとしている。しかし、職場での人種や性別の多様性を求める人々からは、現状の取り組みは十分ではないという声が上がっている。各企業は目標を設定し、それに沿った行動を取るべきだというのだ。
先日、サンフランシスコで開催されたブルームバーグ主催の「女性エンジニア会議」でHearsay Socialの共同創立者でCEOのClara Shihは「業界全体で具体的な行動を起こさなければなりません」と述べた。
「各企業の採用担当者やCEOなどに、達成可能な数字を約束させるようにしましょう」
Pinterestの女性エンジニア、Tracy Chouも同様な意見だ。彼女はPinterestで職場における人種や性別の多様性を推奨し、昨年はGoogleやFacebook、Appleなどの企業に社員の多様性に関するデータを公開させることに一役買った。
しかし、ShihもChouも各職場が人種や性別ごとの割り当て数を設けることには慎重だ。「割り当て数値があると、あるポジションに選出されたのが女性だった場合、その女性は女性であるがゆえにそのポジションにつけたのだと思われてしまいます」と、Shihは言う。
代わりに2人が推奨するのは、社内の人材トレーニングを活性化させることだ。Hearsayではプログラミングを学びたいという女性社員には、社内でプログラミングを学ぶ場を提供している。
Chouらはまた一方で、プロフットボールリーグ(NFL)でコーチの多様性を高めるために採用された方法「ルーニー・ルール(Rooney Rule)」の導入も検討すべきだという意見を持っている。ルーニー・ルールとはNFLのピッツバーグ・スティーラーズの会長ダン・ルーニー氏が考案したもの。ひとつのポジションにつき少なくとも1人は必ずマイノリティーを候補者として検討すべきというアイデアだ。
Pinterestではさらに、メリーランド大学やテキサス大学など、人種や性別の多様性に富んだ大学から、より多くの社員を採用する動きも進めている。「女性のハイテク企業での活躍を推進するために、採用活動も見直すべきだ」とChouは言う。スタンフォード大学のプログラミング入門講座CS106Aではクラスの45%が女子学生だ。コンピュータサイエンスはスタンフォード大学でここ数年最も人気のある専攻科目となっている。
しかし、ハイテク企業らは女性エンジニアの離職率の高さの問題にも直面している。2008年のHarvard Business Reportによれば、テック系企業で働く女性の41%が10年以内に職場を去っている。これに対し男性の離職率は17%にとどまる。「ハイテク産業には女性やマイノリティーを追いやる、何か不快な要因があるのです」とChouは話す。
Pinterestは最近Googleや他の企業にならい、潜在的偏見に関するトレーニングを実施し始めた。これは、自分は偏見を持っていないと思っていても、特定のグループに対し無意識に先入観を持ってしまいがちだということを社員に理解させる試みだ。Googleではこのトレーニングをunconscious bias trainingと呼び、既に何万人もの社員を参加させている。
Pinterestで同様のトレーニングを受けたのはまだ経営幹部だけだが、今後はより多くの社員、特に採用担当者にもこのプログラムを広げていきたいとChouは語る。また同社は偏見をなくすことを念頭に採用と昇進のプロセスで改善すべき点を洗い出すため、性別やバックグラウンドが異なる多様なコンサルタントを採用した。