ビジネス

2023.04.30

トイレに貼った三木谷曲線。社員の意識変化は成長へ

各界のCEOが読むべき一冊をすすめるForbes JAPAN本誌の連載、「CEO’S BOOKSHELF」。今回は、イーストフィールズ 代表取締役の東野智晴が「成功の法則92ヶ条」を紹介する。 


本書は、楽天グループの創業者であり、現在も会長兼社長としてグループをけん引している三木谷浩史氏が会得した「ビジネスで成功するための法則92ヶ条」を、それぞれ見開き1ページ程度にまとめて説明している一冊です。

その法則のひとつ、「三木谷曲線」を聞いたことがあるでしょうか。「三木谷曲線」とは、大半の人が限界までがんばったそのうえに、さらに0.5%の何かを積み上げる努力ができるかどうか。その少しの努力を積み重ねることで、決定的な差が生まれることを示した曲線のことです。

これは、元金から生じた利子を元金に組み入れ、年々利子が増えていく「複利」の考え方そのものです。最初は結果が出なくても、0.5%の努力を続けていけば、驚くほどの大きな伸びを見せてくれる。その最後まで努力し続けられた人だけが大きな成果を手にできるという考えが、今日の楽天グループの成長を支えてきたのです。

私も起業した時から、「一日一日をどうやり切るか」を心のよりどころにしてきました。それは、メールを先延ばしにしないことや資料づくりに妥協しないことなど、効果が見えにくい些細なものばかりですが、その積み重ねがなければ、事業を好転させ、いまの事業規模まで成長させることはできなかったはずです。

そしてこれは、人の成長に関しても同様です。0.5%の努力が仕事の精度や取引先からの信頼を高め、成果を生み、その成果が評価されてさらなるチャンスを手中にできる。この成功が成功を生む体験こそが、中長期的な大きな差となるのです。

実は、当社のオフィスの壁やトイレの壁に、この「三木谷曲線」の図を貼っていたことがあります。社員の仕事ぶりからそれを意識していることがわかり、少しの努力を積み重ねてくれていることが、当社の強みにつながっています。いま、新しいオフィスにも貼ろうともくろんでいるところですが(笑)。

前職の上司が「迷ったら、成功者に従え」と教えてくれたこともあり、経営者になったころから多くの経営者本を読んできました。読んだそれらの本からは、たとえ言葉が違っていたとしても、本質的には同じことを言っており、たとえ業界などが違ったとしても「成功のルール」は一緒であるととらえています。

加えて、本書につづられている92ヶ条は、対人論や組織論、世界観まで多岐にわたるため、ビジネスマンにとって汎用的に幅広く参考になるとともに、読んだときの自分の立場やビジネス環境によって心に響く箇所が違うはずです。私自身、壁にぶつかったときなどの経営のバイブルとして、これからも度々読むことになるでしょう。


ひがしの・ちはる◎1984年生まれ、静岡県出身。慶應義塾大学大学院 理工学研究科基礎理工学専攻。2009年に東京海上日動に入社しエンジニアとして活躍後、13年にベイカレントを経て、18年にイーストフィールズを創業。主にフリーコンサルタント向けマッチングサービスを提供。

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