データを見ると、歩行者の交通事故死が多い州は米南部と南西部に集中している。デラウェア州はこの典型に当てはまらない唯一の州で、死者は人口10万人あたり平均約2.9人と全米で5番目に歩行者にとって危険な州となっている。
米国における歩行者の死者数はじわじわと増加しており、2015年には約5500人だったのが、2020年には6500人を超えた。2021年は、スマート・グロース・アメリカの速報値で過去最多の7300人に上る見通しだ。このデータは、2021年の歩行者死者数が40年ぶりの多さになるとの州知事幹線道路安全協会(GHSA)の推計と一致する。最新データとなる2022年上半期においても、この傾向は緩むことはなかった。
スマート・グロース・アメリカは、歩行者が危険な目に遭い、死者数が増加している主な理由として、米国の道路における設計上の欠陥を挙げている。とにかく直線的で幅の広い道路はドライバーがスピードを出しやすく、何よりも歩道や横断歩道の整備が不十分なことと相まって、事故のリスクを押し上げている。
最も危険にさらされているのは低所得者層と有色人種
低所得者層や有色人種の人々は、歩行中の交通事故で死亡する可能性が最も高い。2016~20年の歩行者の年間平均死亡者数は、全米で10万人あたり1.9人だったのに対し、米先住民は4.2人、黒人は3.0人に上った。これは、貧困率が高く社会から取り残された人々の生活圏が、たいてい幹線道路の近くや歩行者用インフラ設備が不十分な場所にあるからだ。パンデミック期間中に歩行者の死者が急増した際も、最も影響を受けたのはこうした人々だった。専門家は、ロックダウンで交通量が減少したにもかかわらず、2020~21年にはドライバーがより注意力散漫になり、ストレスを感じ、油断していたとみている。渋滞がないことで高速走行する車が増え、死亡事故の増加につながった可能性もある。歩行者死者数が急増した一方、全米の交通事故死者数もそれまでの減少傾向から一転、2020年には07年以来最多となった。
日没後も危険
スマート・グロース・アメリカの報告によれば、他のほとんどの先進国ではパンデミック期間中に同様のパターンは見られず、一般的に歩行者死者数は減少している。米国では、自動車利用者の死者の絶対数と相対数(走行距離に基づく)は依然として歩行者より多いものの、歩行者の死者数のほうが一貫して増加する傾向にある。ハーバード大学公衆衛生大学院の研究は、暗くなってから外出すると歩行者・自動車のいずれも同様に危険性が高くなると指摘している。(forbes.com 原文)