ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナへの侵攻がかつてのソビエト連邦の再建に向けた第一歩になると考えていた。ところが、欧米諸国はウクライナと連合し、軍事面でも経済面でもロシアを打ち負かすと約束。欧州は困難を極めながらも、ロシア産の天然資源から離脱してきた。
アントニー・ブリンケン米国務長官は「米国と欧州はこの1年間で、エネルギー安全保障を巡る協力関係をこれまでより高い段階に進めた」と評価した。「米国は昨年、560億立方メートルの液化天然ガス(LNG)を欧州に輸出した。これは欧州のLNG総輸入量の4割に相当する。前年の欧州向けLNG輸出量との比較では140%増加した」と説明した。
一方、欧州市場でロシアが占める割合は、これまでの4割から1割にまで低下した。ロシアにとっては、欧州の代わりに天然資源を割引価格で購入しそうな国々には、パイプラインの容量やLNGの設備が十分にないという現実もある。
こうした中、欧州ではエネルギー需要の減少や省エネ技術の利用、さらに環境に優しいエネルギーの普及によって、天然ガスの消費量が19%減った。また、今季は暖冬という幸運にも恵まれた。だが、将来的には厳しい冬を想定し、欧州諸国は天然ガスの貯蔵を増やしている。また、船舶で運ばれた凍結燃料を液化できるLNGの輸入基地を23カ所増設し、必要な場所に届けられるよう配管を整備した。
欧州がロシアの海上石油輸送を禁止したことは、米国の石油生産者にとって追い風となる。米エネルギー情報局(EIA)によると、同国の石油企業の送油量は昨年2月の実績では日量760万バレルだったが、今年の同月には日量約1000万バレルに増加した。米国は2018年以降、天然資源の純輸出国となっている。