開発を主導する石油大手コノコフィリップスによると、事業規模が70億〜80億ドル(約9300億~1兆円)とされるこのプロジェクトは、連邦政府と州政府に87億ドル(約1兆1600億円)の収入をもたらし、約3000人の雇用を創出する見込み。アラスカ州の議員らは、バイデン政権にこのプロジェクトの承認を強く求めてきた。
このプロジェクトは、30年間で6億バレルの石油を生産すると同時に、2億8000万トンの炭素を排出するとされている。年間の炭素排出量は900万トンに及ぶことになり、米紙ニューヨーク・タイムズはこの排出量が毎年200万台の自動車走行と同等と指摘している。
環境保護団体は、ウィロー計画を強く非難している。元副大統領で環境活動家のアル・ゴアは、プロジェクトの承認は「無謀で無責任」だと批判。環境保護団体アースジャスティスはこの計画を「炭素爆弾」と呼んでいた。地元の先住民の中には、雇用の拡大を期待する人もいるが、天然資源や野生生物への影響、汚染物質が放出される可能性の懸念から反対する人も多い。
バイデン大統領は、このプロジェクトを承認することで、与党・民主党内の怒りを買っている。同党の議員20人近くは大統領に送った書簡で、「この計画が気候問題に対する米国の進歩に大きな脅威を与える」と主張していた。
オンライン署名サイトのChange.orgに掲載された計画の中止を求める嘆願書には、320万人が署名した。反対運動はTikTokでも広く支持されており、ハッシュタグ「#stopwillow(ウィローを止めろ)」は13日朝の時点で1億7110万ビューを獲得していた。
CNNによると、アースジャスティスを含む複数の環境保護団体が、すでにこのプロジェクトの訴訟の準備を進めているという。AP通信は、バイデン大統領がこのプロジェクトを承認したことで、2024年の大統領選挙で若い有権者の支持を失う可能性があると指摘した。
ウィロー計画は当初、2020年10月にトランプ政権によって承認されたが、2021年に連邦判事が同政権の環境評価に欠陥があると判断して掘削許可を破棄したことで頓挫していた。バイデン大統領は2022年7月の演説で「国民の健康を守り、クリーンエネルギーの未来を勝ち取るために全力を尽くす」と宣言していた。
(forbes.com 原文)