働き方

2023.04.16

英国の若いゲイ男性、3割が就職時に性的指向隠す

Getty Images

英国に暮らすLGBTなど性的少数者の若者のうち、ゲイの男性は就職時に自身の性的指向を隠す傾向が最も強いことが、新たな調査で明らかになった。

調査は、英国の性的少数者の若者を支援する団体Just Like Us(ジャスト・ライク・アス)が、18〜25歳の3695人を対象に実施。仕事を始めたときに性的指向や性自認を隠したと答えた人の割合は、ゲイ男性では31%で、最も高かった。

職場でいじめを受けた経験があると答えた人の割合は、性的少数者の若者では5人に1人(19%)で、非性的少数者の14%より多かった。また、性的少数者の回答者の14%が、職場ではほとんど、あるいは全く自分らしくいられないと回答。その割合はトランスジェンダーの人に限ると20%に上った。

トランスジェンダーの若者は失業率も高い

トランスジェンダーの若者は生計面で相当な格差に直面しており、ますます大きな問題になっていることもわかった。トランスジェンダーの若者は、失業中との回答が56%と最も高かった。

欧米では現在、トランスジェンダーの人々に関する議論が高まり、軋れきを生んでいる。こうした状況は米国で顕著で、多くの州でトランスジェンダー関連の権利が制限されている。

一方の英国では、一部の場所や組織、スポーツでトランスジェンダーの人々を排除する行為の合法化につながる可能性がある指針が、政府によって検討されている。

ジャスト・ライク・アスのエイミー・アシェンデン暫定CEOは「LGBTなどの若者が職場で多くの困難に直面し、4分の1が就職時にクローゼット(自分の性的指向や性自認を隠している状態)に戻ることは非常に懸念すべき問題だ」と述べている。

「調査は、今日の英国社会におけるLGBTなどの人々の扱いが、若年層が職場で生き生きと働くことを妨げていることを示している」

「LGBTなどの若者は学校、家庭、職場で安全に自分らしくいられるべきだ。例外があってはならない」

LGBTは賃金格差にも直面

今回の調査では、性的指向や性自認が顕著な賃金格差につながっていることも示された。性的少数者であることにより、すでに存在していた男女間の賃金格差が著しく広がることが分かっている。

年収が2万ポンド(約330万円)未満の人の割合は、性的少数者の女性全体では31%だったのに対し、男女のどちらにも当てはまらないと感じる「ノンバイナリー」の人では25%、性的少数者の男性では17%、異性愛者の女性では20%、異性愛者の男性では12%だった。

賃金面で影響を受ける傾向が最も強かったのは、他者に性的魅力を感じない「アセクシャル」とレズビアンの人々で、年収2万ポンド未満の人の割合はそれぞれ34%と33%だった。

「若い女性はキャリアの非常に早い段階で潜在的な男女の賃金格差に直面するが、LGBTなどの女性やトランスジェンダーの人はさらに深刻な影響を受けていることを、今回の調査は示している」とアシェンデンは指摘する。

「職場でのいじめが多いことや、最も若い労働人口の間でLGBTなどの賃金格差があるとみられることは、真に懸念すべきだ。職場はLGBTなどの包括性についてもっと取り組まなければならず、LGBTなどの若者はサポートを切望している」

この種の調査は初めてではない。米コンサルティング会社McKinsey & Company(マッキンゼー・アンド・カンパニー)の2021年の報告書によると、米国ではシスジェンダー(出生時に割り当てられた性別と性自認が一致している人)の人の収入はトランスジェンダーの人よりも平均で32%高い。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子・編集=遠藤宗生

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