音楽

2023.04.13 12:30

「坂本龍一は音の職人」ピーター・バラカンが明かす、本当の魅力

ピーターさんは坂本さんが奏でる音を「東洋的」「日本的」だと感じたと言う。坂本さん本人は、YMO時代のシンセ音はむしろ「西洋」を意識したものだと語ったが──。「僕からすると、琴のような音の形をしていて、爪弾かれるような音を彼はシンセで作るんですよ。日本ならではの音だなと思いました」そして、こう懐かしむ。

ピーターさんが坂本さんの音色を「東洋的」だと感じる理由とは? (Getty Images)

ピーターさんが坂本さんの音色を「東洋的」だと感じる理由とは (Getty Images)


「教授は、好奇心の塊みたいな人でしたね。流行っているものがあるとすぐに取り込み、自分の音楽にするのが上手だった。彼のアルバムのゲストミュージシャンを見ると、分かりますよ。ああこういう人、こんな音楽流行っていたなと。彼の心に響いたものをすぐ取り入れちゃう」

晩年の交流 年明けにはメールで「共鳴」

YMO時代以降は、連絡はたまに取り合う仲だったが、会うことも減った。2人が最後に一緒に仕事をし、ゆっくり話したのは2015年。前年に中咽頭がんを発症し手術した後だった。ピーターさんがキュレーターを務める2回目の音楽祭「LIVE MAGIC」のパンフレットに載せるため対談をした。

「NYから東京に来ていて、1時間半くらいだったかな。食事をしながらゆっくり話したんだけど、彼は手術の後だったから健康に気をつけていて、野菜を中心に食べていてお酒も飲まずにいると言ってましたね」

それからも変わらず、メールのやりとりはたまにしていた。最後に連絡したのは今年初め。1月5日放送された坂本さん出演のNHKのドキュメンタリーを見て感想を送ると、いつものようにすぐに返事があった。

「彼はメールの返信がいつも早くてね。この時も10分、15分ですぐ返ってきた。ありがとうと、その番組の映像を息子の音央が担当したことなどが書いてありましたね」

そこには、ピーターさんが出演するNHKワールドの番組「Japanology Plus」を見た感想も記されていた。

「僕の希望でアイヌに関する特集をしたことがあって、教授も興味を持っていることを知らせてくれた。共鳴してくれたのが、嬉しかったですね」
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文=督あかり

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