CEO意識調査で見えた、日本企業が「変革」に出遅れる理由

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2019年から2023年にかけて、世界は激変した。

なかなか収束しない新型コロナウイルス、ロシアのウクライナ侵攻という、世界の人々の健康と価値観、地球環境、国際ルールを激変させる出来事が次々と起こった。

そんな中、カーボンニュートラルが本格化し、企業経営では「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)が必須となっている。これは経済産業省が打ち出した概念で、その理解には世界的視野が必要だ。

そこで、2020年にSXを総合的に支援する専門組織「サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス」を設立したPwC Japan グループの木村浩一郎代表に、世界動静の分析とSXのコツを聞いた。

急激に経済見通しが悪化

「混迷の時代」をどう分析しているのか。木村代表は次にように話す。

「Withコロナがすっかり日常となった中、政治・経済の両面で国際社会の分断が加速した。それがグローバルサプライチェーンの混乱やエネルギー・食料価格の高騰を招いている。インフレが急激に進み、世界的に景気後退への懸念が高まっている」
PwC Japan グループの木村浩一郎代表

景気後退への懸念は、同社の「世界CEO意識調査」(2023年2月)のデータが参考になる。世界105か国・地域のCEO4410名を対象に2022年10月から11月にかけて実施(日本では176名のCEOが回答)*したものだ。
*世界全体や地域の数値は、調査対象国の名目GDPに占める割合に応じた人数のCEOのサンプルに基づき、各地域の意見が公平に反映されるよう加重平均している。

まず、世界経済の見通しから見ていこう。世界全体のCEOの73%、日本のCEOの65%が2023年の世界経済の減速を予測した。経済成長率については、直近10年間で最も悲観的な見通しを示している。

「2020年はコロナ懸念があり悪化した。2021年、2022年と少し回復が見えたが、2023年調査では、2022年のロシアによるウクライナ侵攻の影響が出て、地政学的対立とそれがもたらす国際経済・社会の断絶がクローズアップされた。経営上の脅威は“地政学的対立”と“インフレ”となり、急激に経済見通しが悪化した」(木村)

変革なしでは10年後まで存続できない?

「世界CEO意識調査」には“変革”に関する質問がある。

世界全体のCEOの40%近くが、「変革なしでは自社は10年後まで存続できない」と回答しているが、この質問には地域差が大きく出ている。
 
グラフを見ると、日本は72%のところ米国は20%にとどまっているのだ。木村代表によると、日本はある種「リアクティブ」、つまり物事に直面して行動する受け身な対応だからだ。米国はこれまで変革を先取りしてきたので「プロアクティブ」、つまり将来を想定して主体的に対応する、という違いがあるのではないかという。
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文=笹谷秀光 撮影=小田光二

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