米ダートマス大学の研究グループが7日に専門誌「Bulletin of the American Meteorological Society」に発表した研究によると、地球温暖化によって試合中のスタジアムの気温が上昇した効果で、2010〜19年に大リーグのホームラン数は577本、1シーズン平均58本増えていたという。この研究は地球温暖化による米国野球への影響を調べた初の包括的な研究であり、ピアレビュー(同分野の専門家による評価)も受けている。
研究グループは1962〜2019年に行われたMLBの10万試合超の気象データと2015〜19年の打撃データを解析。その結果、試合時の気温が1度高くなるとホームラン数は1試合あたり2%増えることがわかった。
論文のシニアオーサーであるダートマス大地理学部のジャスティン・マンキン助教は、この現象には「非常に明確な物理的メカニズム」があると説明する。気温が上がると空気の密度は低くなり、打ったボールが空気中で受ける抵抗も小さくなる。そのためボールはより速く、より遠くまで飛んでいくというわけだ。
地球温暖化が続けば、ホームラン数はさらに増えていくと予想されている。温暖化が最も進むシナリオに基づくと、気温上昇によるホームランの押し上げ効果は2050年には192本、2100年には500本近くに達するという。
50年で約50%増えた本塁打
大リーグのホームラン数は過去50年、右肩上がりで伸びている。「Baseball Reference」のデータによると、1963〜72年には1試合あたり平均0.78本にとどまっていたが、2013〜22年には1.14本と50%近く増えた。背景には気温上昇以外にもさまざまな要因がある。2000年代には選手の間でステロイドやヒト成長ホルモン(HGH)などパフォーマンス向上薬の使用がまん延し、ホームラン率は当時の過去最高に上がった。過去10年にはチームの打撃力を高めるためにボールの使用が変更されたとも言われるほか、打者たちは長打のため打球角度の最適化を重視するようになっている。
学術的な研究は少ないものの、空気の密度がボールの飛距離に与える影響は十分に立証されている。たとえば、海抜1マイル(約1.6キロメートル)強の場所に立地するコロラド・ロッキーズの本拠地「クアーズ・フィールド」は、広大な敷地にもかかわらず、空気が薄いおかげで打者に有利な球場になっている。
ダートマス大の調査で最新のシーズンである2019年、大リーグで打者の打ったボールの5.7%がホームランになった。このホームラン率は50年前のほぼ2倍にあたる。
(forbes.com 原文)