食&酒

2023.03.31

イタリア、「伝統的な食文化を守る」との理由で培養肉の販売禁止へ

Getty Images

イタリア政府は、培養肉やその他の合成食品の販売を禁止する法案を提出した。その主な理由としてイタリアの食の伝統の保護を掲げている。

法案が可決されれば、違反者には最高6万ユーロ(約860万円)の罰金が科される可能性がある。

「自然な食品」の保護を訴えるロビイストたちは、ここ数カ月でジョルジャ・メローニ首相を含む50万人の署名を集めた。

メローニ政権はこのほど、ピザやパスタへの昆虫由来の小麦粉の使用禁止を決定した。

メローニ首相はローマにある自身の事務所前でイタリアの農家らによる組織であるColdiretti(コルディレッティ)が主催した『即興の集会』で、「卓越性を守る問題だけでなく、消費者を守る問題においても、農家を先駆けとする施策を農家とともに祝うこと以外にはできない」と語った。

農業団体は培養肉などを禁止する動きを歓迎したが、動物愛護団体は失望を表明した。動物愛護者らは、培養肉が二酸化炭素の排出や食の安全といった問題に対する有効な解決策になると考えている。

メローニ首相と同じ極右の政党に属するロロブリジーダ農相は、「実験室で生み出されたものは品質、健康、そして伝統が息づいているイタリアの食、ワインの文化や慣習の保護を保証しない」と主張した。

この法案は魚や牛乳などを含め、動物の細胞を培養して生産される食品を対象とする。

米食品医薬品局(FDA)は2022年11月、「慎重な評価」の結果、細胞培養した鶏肉を人間の食用として認可した。

欧州連合(EU)内では今のところ認可されていないが、欧州食品安全機関(EFSA)は、培養肉のような細胞ベースの農業は「健康的で環境に優しい食品システムのための有望で革新的な解決策として考えられるかもしれない」と述べている。

EU内では商品やサービスのやり取りが自由なため、認可されればEU内で生産された培養肉の販売にイタリアは反対することはできないだろう。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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