「飼い主さんは『うちの子がいろんなことに興味をもって楽しみたいと思っていると知った。保守的になりすぎていた』と話されていました。それ以来、ドッグトレーナーさんのいるハイキングイベントに一緒に参加したりされているそうで、思い出作りにイヌパシーが貢献できたことがとても嬉しいです」
私たちは、ペットを思うあまり、つい過保護になり、モノの与え過ぎや押しつけをしてしまうこともある。イヌパシーを使うことで、愛犬が本当に喜んでいるか、何を欲しがっているかを知ることができるのだ。
ただ、感情の察知ではなく、ペットと直接会話ができた方がより良いようにも思うが、そうしなかったことが支持を集めた秘訣だと山入端は話す。
飼い主に「問い」を与えることがミソ
「無理に人間の言葉に当てはめてしまうと、飼い主とのコミュニケーションの齟齬が起こるんじゃないかと思うんです。『その言葉はうちの子っぽくない』とか『いまのペットの様子と言葉がかみあっていないから、そんなことは思っていないだろう』といったすれ違いです。動物には動物の考え方があるのに、人の言葉に置き換えるのは、人間本位かなと。だからこそ、言葉にせず、状況を客観的に知らせることに特化したのが良かったんだと思います」
専用アプリで、リアルタイムの心の状態などを見ることができる
犬の感情の変化を見ていくと、実はこの音がストレスを与えているのでは、この餌の方がお気に入りかも、といった新たな気付きが得られる。この“気づき”や“問い”こそがとても大事なのだという。
なぜ感情が変化したのか。それを考えることは、ペットが本当に欲しがっているものや、喜ぶことを考えることに繋がる。「イヌパシーはペットに向き合う時間と機会作っているだけなんです」と山入端は言う。
「答えを出さない」ことは、イヌパシーの開発者であるCTOの山口譲二やメンバーと考え抜いたペットの幸せ論にも通じている。
「“ペットにとって”や“イヌにとって”という括りはあまりに大きすぎます。人に個人差があるように、ペットにとっての幸せはそれぞれ違うはず。だから、私たちは解を出そうとするのではなく、ペット一人ひとりの声に耳を傾けていくことに専念しました」