クロエは消費者による製品の購入と売却を、概念上ほぼ同様の手軽さにするプロセスを構築した。「2023スプリングコレクション」で発表したアイテムにはそれぞれ、米イーオン(EON)が開発したプラットフォーム上で管理するための識別子が割り当てられている。
購入した顧客は自身のモバイルデバイスでスキャンすることにより、製品のデジタルIDを通じて「素材やクリーニングの方法、製造された場所や日時、生産から販売までの移動の履歴」といった情報を入手できる。
また、ブランドやその提供するサービスに関する情報も得られるほか、現在の所有者が購入した消費者であることを証明するデジタル認証関連の情報にも、アクセスすることができる。
仏トラストプレイス(Trust-Place)が発行するこの認証は、新品として販売された後の所有権の把握を可能にすることで、ブランドに対する信頼性と透明性を高めることを目的としたものだ。
顧客が製品の売却を決めたときには「再販」を選択すると、リセールプラットフォームを運営する仏ヴェスティエール・コレクティブ(Vestiaire Collective)のサイトに、自動的にその製品が掲載される仕組みになっている。
「革新的システム」の利点
リセールにおいては、その製品が「本物」だと証明する必要がある。だが、そのためには手間とコストがかかる。偽物が入り込むのを防ぐと同時に、再販の規模を拡大し、利益を上げることが可能な方法は、これまで確立されていなかった。一方、ブランドがリセールを支援すれば、中古自動車のディーラーと同じように、消費者にもう一度そのブランドの製品を購入してもらうことにもつながる。
そのほか、憧れのブランドの製品が高価で購入できないという消費者も、リセール市場でならば購入が可能になる。つまり、ブランドにとっては顧客層の拡大につながる。
「成長が可能で、環境負荷が小さいビジネスモデルを追及している」というクロエのリカルド・ベッリーニCEOは、高価な新品の製品には手が届かない消費者にも購入が可能になることについて「心配はしていない」という。
ベッリーニは「顧客には私たちの製品を買ってもらい、その価値が長く持続するものであることを知って欲しいのです」と語る。顧客との長期的な関係を築くことには「付加価値がある」との考えだ。
ブランドが製品に個別のデジタルIDを付けることにより、リセールサイトでの販売を始めたのは、これが初めてだ。だが、これはクロエで最後になるものではないだろう。さらに、リセールだけに限らず、製品の認証、ブランドのサービス、買い物のそれぞれにおいて、最適なモデルとなり得るものだ。
クローゼットのなかにあるすべてのものにデジタルIDが付けられている世界を、想像してみて欲しい。自分が所有しているものすべての価値を、一瞬で確認することができる。そして、どのアイテムを売却するか、選ぶことができる。
小売の世界は今後、これまでとはまったく違ったものになっていくだろう。クロエが踏み出したこの一歩が示すのは、そうした未来の到来が、予想されている以上に早いかもしれないということだ。
(forbes.com 原文)