北米

2023.02.21

リモート化で地元経済に打撃 NY市、年間1.6兆円失う

Getty Images

商業活動が落ち込めば、税収も減る。そうなれば、ニューヨークは行政サービスの縮小を余儀なくされるだろう。つまり、警察官や消防士、清掃作業員、公共交通機関職員、看護師、教師などの採用数を減らしたり、人員削減が加速したりするということだ。

ちょうど1年前の昨年2月、経済の下方スパイラルが懸念されていたころに、ニューヨークのエリック・アダムス市長は、市内の大手企業100社の最高経営責任者(CEO)と会合を開き、市の経済を活性化させるために、従業員をオフィスに呼び戻すよう要請。オフィス復帰を遅らせることで「矛盾したメッセージを送るわけにはいけない」とし、「これ以上、先延ばしすることはできない」と訴えた。

マンハッタンを訪れた人が、人通りの少ない街並みや、閉店してしまった小売店やお気に入りのレストランなどを目にすれば、もう来るのはやめようと思うかもしれない。政治家、家主、企業幹部、事業主にとっては、従業員が出勤してオフィスで働くことが大きなインセンティブとなる。従業員がニューヨークに戻ってこなかったら、ビジネスがドミノ倒しのように次々と閉鎖するかもしれない。レストランやバー、ジム、小売店などが閉業を余儀なくされる可能性がある。

閑散とした街並みに吸い寄せられるのは、犯罪や暴力だ。薬物を公然と使用する人も増えるだろう。ニューヨークでは昨年、犯罪と暴力の発生率が大幅に上昇した。ウォール街の企業幹部は若い従業員に対して、オフィスに戻って働くよう求める一方で、出勤中は気を抜かず注意するよう忠告している。

バンク・オブ・アメリカは2021年4月、銀行員やブローカー、トレーダー、その他の職員に対し、目立つような服装を避けるよう勧告した。高級ファッションや高価なジュエリーを控え、銀行のロゴが目立たないようにすれば、よからぬ人から目を付けられる確率が低くなるからだ。

ゴミ収集人や消防士、警察官、教師、医療機関の職員が減れば、市民の生活の質にも差しさわりが出てくるだろう。

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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