これは興味深い選択だ。ウクライナの空中襲撃旅団は現在、タービンで駆動するウクライナ軍最速の戦車T-80BVを運用している。しかしディーゼル駆動のチャレンジャー2はおそらくウクライナ軍で最も遅い戦車となる。チャレンジャー2は空挺部隊に兵たんと戦術の見直しを迫るかもしれない。
第25、第80空中襲撃旅団が最初のチャレンジャー2を運用すると考えて間違いなさそうだ。というのも、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領と英国のリシ・スナク首相が2月8日に英イングランド南部ドーセット州のラルワースにある英軍の訓練施設で会談した際、これらの部隊のパッチをつけたウクライナ兵が出席していた。
また、ウクライナ軍の空挺部隊を訓練する第199訓練教育センターの教官も同席していた。
ウクライナ軍の空挺部隊は必ずしも他の軍隊の空挺部隊と同じではない。自国で機械兵器を使った戦争を戦っているため、飛行機からパラシュートで降下することはほとんどなく、ヘリコプターで移動することもごくまれだ。また、英軍や米軍の空挺部隊とは異なり、ウクライナの空中襲撃旅団はそれぞれ10両前後の戦車を保有している。
しかしこれらの旅団は迅速に移動するための訓練を行っているため、実のところジェットエンジンを搭載した戦車を運用しているのは理に適っている。重量42トン、乗組員3人のT-80BVは1000馬力のタービンを搭載している。このタービンは通常、航空燃料で動くが、理論上はあらゆる液体炭化水素燃料を燃やすことができる。ケロシンさえも対応可能だ。
米国がウクライナに供与を約束した重量70トンのM-1エイブラムス戦車31両も同様だ。
T-80BVはタービンのおかげで舗装された道路では最高速度が時速約80キロに達し、ディーゼルのチャレンジャー2の最高速度を約20キロ上回る。もちろんこのスピードは高くつく。T-80BVは約321キロ走ると燃料を使い果たすが、チャレンジャー2は約547キロ走行可能だ。
乗組員4人のチャレンジャー2はまた、スピードと引き換えに装甲が強化されている。この戦車は世界で最も防御力の高い戦車の1つだ。
初めて供与されるチャレンジャー2で第25、80の空中襲撃旅団の戦車中隊は現在よりも遠くまで移動し、敵の激しい攻撃を受けても生き延びることができるようになる。しかし、その動きはゆっくりしたものだろう。
各旅団の戦車中隊が何両のチャレンジャー2を運用するかは不明だ。現時点でウクライナ軍の「航空機動」戦車中隊はT-80を約10両保有している。しかし英国がこれまでに供与を約束したチャレンジャー2はわずか14両だ。これは、ウクライナ軍が予備の戦車を持たないと仮定した場合、7両編成の戦車中隊2つ分に相当する。
7両の戦車は旅団規模の諸兵科連合の戦いにはおそらく少なすぎる。このため、英国はいずれチャレンジャー2をさらに供与するつもりであることが強く示唆される。
英陸軍は取得した386両のチャレンジャー2のほとんどを退役させた。そのため、自らの激減した在庫を取り崩すことなく数百両の戦車を提供することができるかもしれない。
(forbes.com 原文)