Z世代を取り込んで売上3倍、TVerの強みに迫る

田中友梨
さらに、特定の地域しか放送されない番組が視聴できるという点も、「推し活」をしているユーザーにとってのメリットだ。

これまで東京では一部の人気番組を除き、地方局が制作した番組を見る機会はほとんどなかった。同様に地方の視聴者は、全国ネットされていない東京の番組を見ることはできない。だが、TVerではそうした「地上波の制約」に縛られることなく、全国各地の番組を楽しむことができる。

つまりTVerによって、「推し」がどこでテレビに出ていても見ることができるようになった。実際に視聴者から「今までは、自分の推しのお笑い芸人がローカル番組で冠番組をもっていても見ることが困難でした。TVerのおかげで推しの活躍を見届けることができる!」などという声があがっているそうだ。

「人気のあるローカル番組のひとつが、千鳥さんが出演されている大阪の朝日放送テレビの『相席食堂』。それから島根県のTSKさんいん中央テレビの『かまいたちの掟』も、TVerアワードを受賞するくらい人気があります」


ローカル番組が今後の成長のカギに

こうした「推し活」需要は伸びている一方、「常時600番組を配信しているので、どうしても発見されづらい番組が出てくる」という点に課題もある。今後はいかにすべてのコンテンツを効率よく見せていけるか、に取り組んでいくという。

例えば、番組名やタレント名のほかに、趣味嗜好に関するキーワード検索も想定した特集を展開している。そのひとつが、2022年9月に実施した「サウナ番組大特集」。全国各地の放送局が制作する170本以上のサウナ番組を一挙に配信した。

これは、この2年間で「サウナ」というキーワードの検索が増えていたことを踏まえた取り組みで、キーワードでテレビ番組を見る、という視聴方法の提案にもなった。

「テレビコンテンツの楽しみ方とか、情報の共有の仕方みたいなことも含めて、1から逆転の発想で考え直すこともありなんじゃないかなと思っています。例えば、地方で眠っている情報だったり、インバウンド向けの情報だったりをTVerでたくさん流して、それをユーザーの視点で自由に切り取ってシェアして楽しんでもらう、という方法もあるかもしれません」
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取材・文=下矢一良 編集=田中友梨 撮影=小田光二

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