北米

2023.01.13

ハワイ島噴火 でも不動産人気が衰えない独特な理由とは

ハワイ島の不動産人気は衰え知らず

島のいたるところが、かつて流れ出た黒々とした溶岩に覆われ、2つの活火山の存在をごく身近に感じられるハワイ島。この地で暮らすとなると、エリア次第ではいつ再び火山が噴火して避難することになるか、いつ自宅が溶岩流に飲み込まれるかわからない。さまざまなリスクが伴うと感じるのは、当然のことだろう。

だが、そんな一般的な考え方とは裏腹に、ハワイ島の人口は着実に増加している。1980年の島の人口は、わずか9万2053人だったが、2000年には14万8677人、2010年には18万5079人、そして2022年には20万2906人となっている。1990年から2010年までは20%以上の割合で増加していることになり、オアフ島の10%前後の伸びと比べても顕著だ。

現地の不動産業者によると、今回のマウナロア火山の噴火は、ハワイ島の不動産市場にまったく影響を与えなかったという。その理由は、不動産価格が手頃だからだ。2022年12月における、ハワイ島の戸建て住宅の中間価格は46万1700ドル(約6000万円)。オアフ島の104万2500ドル(約1億3700万円)、マウイ島の109万2500ドル(約1億4400万円)と比べると、その半分以下の価格で購入できるのだ。

ハワイの中心であるオアフ島に比べると、生活の利便性は劣るかもしれないが、それでもある程度の住みやすい暮らしを送れるハワイ島は、アメリカ本土でリタイアした人や、ハワイの別の島に住む人が移り住む地として、恰好のエリアのようだ。実際、パンデミック期間中にハワイ島の不動産売買額は約40%増加したという。

地元では、火山の影響のリスクを数値で示した「ラバゾーン」と呼ばれるハザードマップが公表されており、不動産の売買では物件の地域について、どの程度リスクがあるか、誰もが確認できるようになっている。もちろん、不動産の売却時には売主が噴火による影響や被害などを買主に開示しなければならない。そのため、それらの情報を手掛かりにより安全な地域の住宅を探せば、オアフ島やマウイ島よりもずっとリーズナブルな価格でマイホームを持てるのだ。

女神ペレの火山神話も根付く

また、ハワイでは古くから火山の女神ペレの神話があり、火山はペレが住む場所と伝えられてきた。だから、ペレの近くに住むことに誇りや尊敬の念を抱いたり、自然を身近に感じられる場所に住むことに魅力を感じたりする人もいるのだという。

一部住民に被害をもたらしたキラウエア火山噴火の際も、現地の人々は大騒ぎするというより、比較的落ち着いて非難等に対処している印象を受けた。火山や自然に対して独特の価値観が根付き、まさに“火山と共生する島”と言えるのだ。

ちなみに、マウナロア火山では噴火後、沸き立つ真っ赤な溶岩を一目見ようと観光客が増加。通常なら、サンクスギビング明けで観光客は減るシーズンだったが、火山に近い地域のホテルでは満室になり、ヘリコプターツアーなども人気だったという。ハワイ島の火山は、リスク以上に多くの人々を惹きつける存在なのかもしれない。

文=佐藤まきこ

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