ビジネス

2015.06.19

台湾発「スマートバイク」は世界を席巻するか?

自慢の「スマートスクーター」に左右を挟まれたゴゴロのルークCEO。 電気自動車は、慢性的な交通渋滞で悪化する大気汚染を軽減する切り札として期待されている。



スマホのアプリでエンジンを立ち上げ、充電スタンドで電池を交換する―。
バイクの乗り方の常識が変わりそうな新時代のスクーターが台湾で誕生した。

美しいモノに目がない、携帯電話メーカーHTCの元最高技術革新責任者ホラス・ルーク(45)は2012年、発売されたテスラモーターズの電気自動車「モデルS」を買う気満々でいた。

ところが当時、モデルSは台湾では発売されず、取り寄せたところで充電できる場所が少なく不便だった。
そんなとき、ルークは、電気自動車のための充電スタンドや駐車場が足りないことに気づいた。

「だからこそ、特別に裕福ではない人たちのためにも(テスラの代わりになるような)製品をつくる必要があったのです」

11年、ルークは同僚のマット・テイラーと一緒にHTCをやめ、2人で「ゴゴロ」を立ち上げた。そして、iPhoneとベスパを掛け合わせたような高機能で美しいスクーター、その名も「スマートスクーター」を開発したのだ。

今夏の発売が予定されているスマートスクーターは、125ccのエンジンを搭載し、4.2 秒で約50kmに到達する。専用のスマートフォンアプリを使えば、ブルートゥース経由でエンジンをかけることも可能だ。
価格は未定だが、アジア圏で人気のホンダやヤマハに近い価格帯の2,000〜3,000ドル(約24万〜36万円)を予定している。

本来であれば、オシャレで高性能な分、ふつうのバイクよりはやや割高なはず。ところが、ルークはビジネスモデルをひと工夫することで価格を抑えることに成功した。
なんと、スクーターの電池を「交換式」にしたのだ。つまり、購入者は電池を所有せず、充電スタンドで携帯式の電池を月額定額レンタルするのである。

じつは、電池交換方式のビジネスモデルそのものは新しくはない。
かつて、イスラエルの新興企業「ベタープレイス」が、電池交換方式を提唱したことがあった。ただ、時代に先んじていたためか、利用者が増えず、あえなく頓挫している。

しかし、ベタープレイスの失敗を踏まえて、ルークには“秘密兵器”がある。
交流電源のある場所なら、どこにでも設置できる自動販売機大の充電スタンド「ゴーステーション」だ。使い方も簡単で、1分もかからずに電池を交換できる。

その電池も、パナソニックとの業務提携が決まるなど、着々と準備が進んでいる。今度こそ、「電気自動車×電池交換方式」に勝機はあるかもしれない。

アーロン・タイリー = 文 クリス・ストワーズ = 写真 フォーブス ジャパン編集部 = 翻訳

この記事は 「Forbes JAPAN No.12 2015年7月号(2015/05/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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