CEOs

2023.01.12 08:30

CEOが空席となる大手小売企業が続出

スティーブ・レンドル(Photo by Hyoung Chang/The Denver Post via Getty Images)

スティーブ・レンドル(Photo by Hyoung Chang/The Denver Post via Getty Images)

昔から、大手小売企業の最高経営責任者(CEO)は素晴らしい仕事と見なされてきた。しかし現在、VFコーポレーション、ギャップ、ザ・リアルリアル、コールズなど、いくつかの大手小売企業にポストの空きがある。そして、各社の経営陣が前年の業績を検証するのに伴い、CEO職を手に入れるチャンスがさらに広がる可能性もある。

従来、多くの企業には、才能ある若い人材を引きこむトレーニング部門があり、新入社員は会社の気風を学びながら、経営幹部への階段を昇っていた。最終的に、集団から抜け出した人が上級幹部になる。こうして、会社にとって有益な人材がプールされていたが、それは他社が幹部候補を引き抜くチャンスにもなっていた。だが、時代は変わった。トレーニング部門は、もはや過去の遺物になっている。

幹部を選別するそうしたファネルがないせいで、有能な人材が不足する状態に陥っている。その不足を痛感するのは、退任した人材を補充するときだ。

いくつか実例を見てみよう。

VFコーポレーション。12月にスティーブ・レンドル(Steve Rendle)が、取締役会の同意を得て退任した。VFコーポレーションは多種多様な子会社を持っており、ザ・ノース・フェイス、ヴァンズ、ディッキーズ、シュプリーム、ティンバーランド、ジャンスポーツなどが名を連ねる。同社が必要としているのは、この多様なポートフォリオを把握し、それぞれのブランドに適切なサポートを提供できるリーダーだ。

ギャップ。2022年7月にソニア・シンガルが退任したが、後任探しを急いではいないようだ。マルチチャネル企業であるギャップの再活性化という重荷を喜んで引き受けようと歩み出る候補者も現れていない。同社はギャップのほか、バナナ・リパブリック、オールド・ネイビー、アスレタといったブランドを擁する。かつてミッキー・ドレクスラーが築いた同社と各部門のイメージは、とうの昔に忘れ去られている。それに代わる新しくてフレッシュな何かが必要だ。

ザ・リアルリアルの創業者ジュリー・ウェインライト(July Wainwright)は2022年6月にだしぬけにCEOを退任し、現在は2人の暫定CEOが同社を率いている。しばらくはそれでうまくいくかもしれないが、通常、責任がきちんと果たされるのは、1人のCEOが難しい決断を下しているときだ。

コールズ・コーポレーション。ミシェル・ガスは、コールズのCEOを12月2日付けで退任した。リーバイ・ストラウスの次期CEO職を引き受けるガスにとっては刺激的な転職だが、この退任により、コールズ取締役のトム・キングスベリー(Tom Kingsbury)が暫定CEOに就き、後任の人選に着手することになった。キングスベリーは、ディスカウントチェーン「バーリントン」のCEOを務めた経験を持つ人物だ。新CEOは、コールズのイメージと在庫の問題に取り組み、新たな刺激を生み出す必要がある。

2023年には何が起きるだろうか? ベッド・バス・アンド・ビヨンドは苦境にあえいでおり、その他の企業も、第4四半期の決算をおそるおそる検証している。いま必要とされているのは、投資家にもサプライヤーにも、顧客にも社員にも支持されるビジョンを持つ、強力で積極的なCEOだ。

追記:現在、小売業界は厳しい時期にある。なぜかといえば、顧客ニーズが急速に移り変わると同時に、経済的展望が不透明で、世界規模の不安があるからだ。必要とされているのは、興奮を生み出し、小売事業者の特徴を明確にするビジョンを持つリーダーだ。

新たなCEOは、革新的かつ創造的でなければならない。また、説得力のあるビジョンを打ち出し、あとに続くチームを奮い立たせるリーダーシップを示す能力も備えている必要がある。若い世代は、革新性と、他とは違う何かを求めるはずだ。一部の企業にとっては、厳しい1年の幕開けになるだろう。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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