英国政府が最初にこの目標を掲げたのは2019年だが、直近の傾向と進捗を分析した結果、英国がこの目標を達成するのは2039年にずれ込むことが示唆された。
英国の喫煙率は、1950年代のピーク以降、徐々に低下し続けている。2019年に行われた最新の調査によれば、英国成人の喫煙率は14%強で、女性の喫煙率は男性よりやや低い。
これは、米国の喫煙率(成人の約12.5%)をわずかに上回る水準だが、ヨーロッパのいくつかの国々、例えばフランス(25.5%)やドイツ(30.9%)と比べれば格段に低い。
それでも、英国では年間7万5000~10万人の人々が、喫煙に関連する疾患で命を落としている。このうち3万5000人の死因は肺がんであり、肺がんは英国で最も死者数の多いがんだ。
喫煙率が成人の5%未満である国は、少数ながらすでに存在する。ナイジェリア、パナマ、エチオピア、エクアドル、ガーナなどがそうで、これらの国々の喫煙率は成人の数%にすぎない。ヨーロッパで最も喫煙率が低い国はスウェーデンであり、2018年の時点で成人の10%だった(日本の2019年喫煙率は16.7%。男性27.1%、女性7.6%)。
現在の英国の喫煙者人口は750万人であり、喫煙は依然として、がんと早期死亡の原因のトップだ。多くの国々と同様に、喫煙と社会経済的地位には関係がある。国内の貧困地域では、裕福な地域と比べて喫煙率が高く、またヘビースモーカーの割合も大きい。
喫煙はまた、英国の納税者が支える医療制度「国民健康サービス(NHS)」にも重い負担を課している。NHS負担額のうち、喫煙を原因するものは24億ポンド(約3840億円)にのぼり、年間50万件の入院が喫煙に起因するとされる。喫煙による早期死亡、失業、収入減少によって失われる生産性コストは130億ポンド(約2兆800億円)と推定されている。
王立がん研究基金の主任臨床医を務めるチャールズ・スワントン教授は、「禁煙は、新年の抱負の定番だ。しかし、自力で達成できる人はめったにいない」と述べる。「たばこをやめるには、サポートと適切なツールが必要だ。にもかかわらず、禁煙サービスへの予算は繰り返し削減されている。また、サービスの利用しやすさには、国内で大きなばらつきがある」
王立がん研究基金は現在、英国政府に対して、進捗の遅れに早急に対処し、喫煙抑制のための詳細な計画を発表するよう働きかけている。
王立がん研究基金のミシェル・ミッチェル(Michelle Mitchell)CEOは、「喫煙は依然として、英国における予防可能ながんと死亡の最大要因だが、政府はこれを変えるための権限を有している」と指摘したうえで、「大胆な行動と強いリーダーシップを示すことで、我々は、たばこのない未来を築き、がんを減らして命を救うことができる」と述べた。
(forbes.com 原文)