スタジアム・アリーナ改革「25年までに20拠点」の成否の鍵は?

国立競技場(Photo by Carl Court/Getty Images)

国立競技場(Photo by Carl Court/Getty Images)

今年も学生たちの熱戦で新年を迎えた国立競技場。
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本来ならば22年に民間事業者による運営が始まっていたはずだが、12月28日にスポーツ庁が発表した新方針によると、球技専用スタジアムへの改修計画を正式に見直して陸上トラックを存続させ、24年度の民営化に向けた公募を始めるという。

年間上限10億円の維持管理費と50年で650億円と想定される大規模修繕費が公費負担とされ、東京都などへの借地料を加えると、民間事業者が決定した後にも国の負担は、年間30億円を超える可能性がある。

この総工費1500億円超、約6万8千人収容の国立競技場とは単純に比較できないが、全国各地から聞こえてくるスタジアム・アリーナ建設の動向が気になる──。
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ハコモノ行政を過去のものとできるか


経済産業省とスポーツ庁は「スタジアム・アリーナ改革」を標榜し、2025年までに20拠点を整備するとしている。

多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」を25年まで毎年選定し、重点的なサポートを行っていく予定で、すでに20年、21年でエスコンフィールド北海道(北広島市)など14拠点を公募選定している。

多機能型、民間活力導入、街なか立地、収益性改善を前提に、まちづくりの中核となる施設として、地域に持続的な成長と波及効果をもたらすとしているが、果たして400~600億円の建設費をかけた3万人規模のスタジアムや、150~400億円を投じた8千人〜2万人収容のアリーナは、採算事業として成立できるのだろうか? 新たなハコモノ行政の象徴となりはしないか。

日本初「BTコンセッション」アリーナ誕生


もちろん行政も決して無策というわけではない。

26年に開催予定のアジア競技大会に向けて新たなアリーナを必要としていた愛知県は、新体育館(愛知国際アリーナ)の整備・運営事業で、日本で初めて、BTコンセッション方式を採用した。

愛知県新体育館(愛知国際アリーナ)
*画像はイメージです (c) Aichi International Arena

このBTコンセッション方式の導入により、設計・建設費400億円のアリーナが、愛知県負担約200億円で整備されることになる。

BTとはビルド・トランスファーの頭文字を冠し、公共主体(ここでは愛知県)が民間事業者の設計・建設の提案を受け入れた施設の設計・建設費を部分的に拠出、完成後に所有権を公共主体(愛知県)に移転する仕組みである。施設運営権はコンセッションとして、施設の所有権を公共主体(愛知県)が保有したまま、この事業では30年間、民間事業者に移譲される。

公募により前田建設工業とNTTドコモを幹事社とするSPC(特別目的会社)が選ばれ、25年夏に1万7千人収容のスマート・アリーナが、名城公園内に誕生する予定だ。
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文=北谷賢司 編集=宇藤智子

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