ビジネス

2022.12.16

大企業志向の岐阜大で、なぜ「起業部」が盛り上がるのか


最近では、地元企業の会社役員や、海外で起業した岐阜出身者などが、岐阜大学の起業部の存在を知り、活動の様子を覗きに来ることも増えたという。

今年9月には、4年生部員の夏目一輝(なつめ・いつき)くんが、2人目の「起業家」として名古屋市で「artkake(アトカケ)」を設立。彼の姉が通う愛知県立芸術大学で、展示会後に作品が処分されていくのを目の当たりにして、それらの絵画を使ったグッズの販売などで、芸術家の活動を支援する事業を始めた。

勢いに乗る岐阜大学の起業部だが、上原准教授は、課題は後継者育成だという。

「実は、いまの3代目の部長はなかなか決まりませんでした。現部長の小和田くんは東海地域でコミュニティ運営を行うなど、やる気があり、みんなで部長に推薦しました。最終的には引き受けてくれましたが、当初は乗り気ではなかった。先輩たちが結果を出し始めていた時期で、プレッシャーもあったのかなと思います」

冒頭で紹介の起業部調査を発表した、ガイアックスの執行役である佐々木喜徳(ささき・よしのり)氏は「最初は、意欲ある教授や学生が起業部を立ち上げますが、その熱量だけでは部活ももちません。活動が継続される仕組みを構築できず、発起人がいなくなるとともに廃部に追い込まれるケースが増えているのではないでしょうか」と厳しい指摘もする。

ただ2022年度からは、三菱みらい育成財団による助成金の援助も始まった。3年間にわたり、年1600万円もの金額が岐阜大学に交付され、資金面での当面の不安はない。

必ずしも「起業」することがゴールではない部内で、どうモチベーションを維持するのか。地域からの支援も続くような仕組みづくりへとアップデートが求められている。

文=露原直人

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