ビジネス

2022.12.16 08:50

大企業志向の岐阜大で、なぜ「起業部」が盛り上がるのか


現在、起業部は、東海圏の他の大学でも存在感を増している。2021年に行われた「Tongali(トンガリ:名古屋大学、豊橋技術科学大学、名古屋工業大学、岐阜大学、三重大学など18大学による起業家育成プロジェクト)」ピッチコンテストでは、受賞者の半数が、起業部に所属する学生だったという。
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岐阜大学の起業部の部員には、自ら海外に足を運び、起業に向けて準備を進める学生もいる。ある学生のチームは、フィリピンで大量に廃棄されるバナナを、ジュースや菓子の材料になるパウダーにして、販売するビジネスを考えている。

部員たちの意欲に火をつけたのは、前出の長曽我部くんだ。彼は2021年9月に、繊維スタートアップ「FiberCraze(ファイバークレーズ)」を、当時所属していた研究室の教授とともに設立。地元の新聞でも取り上げられ、地域からも注目を集めた。部内から生まれた起業家第1号だったことで、「次は自分が」と部員たちの意欲に火がついたのだ。

活動が継続される仕組みを


部活のモチベーション維持は、岐阜という土地柄にも関係していると上原准教授は話す。
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「中京圏は大企業志向です。学生は保守的な傾向で、親も大手の製造業に勤めている場合が多く、子どもたちにもそれを勧めます。だからビジネスで新しいことをやっていると、周囲から変わった目で見られてしまう。でもだからこそ、部内には結束力が生まれ、部員の誰かがビジネスコンテストに出て受賞したりすると、メンバーが一気に盛り上がるんです 」

これが東京や大阪であればどうだろうか。起業家があちこちに存在し、ピッチイベントなども日常的に行われ、投資家へのアクセスも容易だ。中京圏のように安定志向が根強い地域だからこそ、コミュニティが形成され、いわゆる「心理的安全性」が生まれていると言えるだろう。

そしていま、起業部の活動の熱は地元企業などにも伝播し始めている。現部長の小和田仰生(おわだ・あおい)くんたちが今年の夏、合宿を行ったときのこと。飛騨高山に2泊3日の日程で滞在した学生たちは、地域の課題を炙り出し、地元住民にヒアリングをしながら、困りごとを解決する策を考えるプログラムを実施した。

起業部の部員たち
岐阜大学起業部の部員たち

なんと3日間の活動の場を、地元の銀行が提供してくれ、さらには新聞社まで取材に来たという。上原准教授は次のように言う。

「大学側は、直接は企画に関わっていないので、彼らなりに、地域の企業を巻き込んだのでしょう。地銀の高山支店の支店長さんも来られて『地域として、こうした学生の取り組みはありがたい』という言葉もいただきました。

私は結構ラフな格好で行ったんですが(笑)、さすがに支店長さんまで来て驚きました。若者を応援したいという気持ちが、こんなにもあるんだなと再確認しました」
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文=露原直人

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